本

『ボケない脳をつくる』

ホンとの本

『ボケない脳をつくる』
篠原菊紀
集英社
\1400
2005.12

 脳に、世間の関心が向いている。未知の領域であるととともに、科学で解明されている部分が多いことも了解している。それでいて、人々は、「自分」とか「自我」とかいったものを、脳を頼りにするしか行きつく先がなくなったのかもしれない。
 神の前に独り立つ者としての我、といった思考法は、もはや通じないのだろうか。いや、日本においての流行ということで、もともとそんな思考法がなかった、だが何か根拠や背景といったものが欲しい、という切実さが、そうさせているのであろうか。
 要らぬ詮索はよそう。
 とにかく、我が家でも、ニンテンドーDSを爆発的に大人に流行らせる一因ともなった、脳のトレーニングにはまっている大人がいる。たんに脳の機能を退屈な実験と共に説明するよりも、私の能力――脳力――を磨くということで、自分に対する投資として割り切らせる方法が与えられたのかもしれない。
 ここに挙げた本は、グラフィックで実に分かりやすい。こういう分かりやすい本の編集方法の常であるが、見開き頁の中で一話完結となっている。厳密にはこの本は数頁でまとまっている構成なのだが、短いスペースで話題が展開していくのが、やはり読みやすさの一つの理由なのであろう。この辺りも、脳の性格を計算した上での編集なのかもしれない。
 そのDSのソフトと同じ問題も掲載されている。もちろんそのトレーニングほどのしつこさはないのだが、ちょっと試すのに適度な問題と、それが何故難しいのか、それを克服することによってどんな脳の力が保たれるのか、などの説明がふんだんになされている。
 ただ問題を楽しむだけと違い、それなりの理論が構築される。そこに、書物としての価値がある。脳についての実に重宝な一冊となるであろう。
 だが、この本を読みこなすことができた方は、それだけで脳の力が輝いているのかもしれず、この本を読みこなすことができきなかった方は、どうなのか、という疑問も生じる。これが読めたとしたら、すでに十分脳は活用されている、という種明かしである。
 私も、全部丁寧に読むのは諦めた。「要するに、どうすればいいの?」と手っ取り早い方法を知りたい方は、失望するかもしれない。そこが、すでに脳の利用としては、怪しいということに、気づかなければならないのだが……。




Takapan
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