本

『聖書が面白いほどわかる本』

ホンとの本

『聖書が面白いほどわかる本』
鹿嶋春平太
中経文庫
\519
2006.10

 独特の説明で、経済学者が、聖書を文化的にも知るべしという態度で迫ってくる。この姿勢は、著者の以前話題に上ったいくつかの本から、変わることはない。
 ビジネス者に、世界とのつきあいの中で聖書の文化を知らなければ恥ずかしい、という観点から、実用書として発行されたものがあった。それは本当に、理屈で聖書に迫るもので、面白いのは間違いないが、果たして信仰書として役立つだろうか、という印象も与えうるものだった。
 高校生が、聖書に関心をもち、それを著者であると思われる学者に学びに行くという筋書きである。ただし、それはストーリーのようでありながら、ストーリーにもなっておらず、ただ教義的な説明に、舞台を提供しているに過ぎない。
 それでもなかなか面白いと言えば面白いのであるが、要するに都合のよいQ&Aであると言われれば、それまでである。
 また、著者独特の思考であるが、神の恵みとか栄光とかいうものを、エネルギーという概念になぞらえて説明していくこと、「いのち」もそのようにしていることは、問題がないわけではない。たしかに、ビジネスマンに理解してもらうには、そのように言えば、なんとなく近い方向を見ることはできるのだが、今回若者に対してキリスト教の考え方を学んでもらうという意味では、この方法がどうなのか、一考を要する。もはや、それに固まってしまう虞があるからだ。
 しかし、聖書の歴史や現代世界の中でもつ意味など、大人が理解の助けとしてこの本をひとつの整理されたものだと捉える分には、なかなか有効な本である。この本の原版と見なしうる本は別にあるものの、この本は文庫で書き下ろしとなっている。扱いやすいものとなっている。教会学校の担当者が、子どもたちに何かイメージをつかませようとするときにも、役立つかもしれない。
 苦言すべき点は、この本がついに「ゴルゴダ」で通してしまっていることだ。もちろん、「ゴルゴタ」が正しい。




Takapan
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