本

『「勉強」のキホン』

ホンとの本

『「勉強」のキホン』
國立拓治
あさ出版
\1400+
2019.3.

 小学生のうちに身につけたい! これが主眼であろう。タイトルに付けられている文字である。また大きな鉛筆をバックに、タイトルよりもむしろ目立つかもしれないくらいの勢いで、「この1冊で中学生になっても困らない!」が見える。これらのことから、本書はターゲットが小学生であることが分かる。しかも、中学生での学習を視野においた準備とでもいおうか、身につけておきたい勉強への姿勢というものではないかと予想がつく。
 その他文字がいろいろ躍っており、いわゆる「中1ショック」という言葉を知る親にはピピッと働きかけるものがあると思われる。
 さくら個別指導学院という肩書きが著者に付いている。この人が立ち上げたらしい。愛知で活躍しているそうである。できてからまだ十数年のようだが、たいへんな人気があるように本書の宣伝では窺える。その塾長が、学習内容というよりは、親に理解してほしいことを本にした、というふうに理解すればよいだろうか。恐らく、毎度親と面接して同じことを説明し続けるよりは、本書を読んでもらって塾の主張する学習への姿勢を理解してもらったほうが得策だと考えたのではないかと思われるが、そのためには、塾の外へも明らかにしてよいノウハウを本質的なところと区別しておかなければならない。最後に本書で、出し惜しみをしなかった、と書いてあるが、出し惜しみはあるはずである。なにもかもがこの本の中に書かれてあるとは思えない。もしこの小さな本の中に収まる程度の塾であれば、こんなふうに子どもたちや保護者に慕われないだろう。
 そういうわけで、ここにあるのは、学習姿勢であり、心構えである。また、親から子に何をどのようにさせるかという、専ら親目線でのアドバイスであると言ってよいだろう。小学生の親、それは中学受験をさせるというケースもあるが、ここでは基本的にそれはなしで、中学生になって戸惑うという不安を解消する、そしてまた親がどのように態度を決めたり変えたりしていけばよいのか、が教えられる。極めて具体的なアドバイスも多いので、確かに親が本書をよく理解して賛同し、実行するならば、相当な効果があるに違いない。確かに嘘は書いていないと思うのだ。
 もちろん、子どもを十把一絡げにして、こうすればよい、こうしてはいけない、とマニュアル処理ができるようには思えない。本書でも触れてあるが、家庭の事情でたとえばこのようにしてはどうだろう、というアドバイスもいろいろある。時に、こうしてください、と断言する時もあるが、まぁ睡眠時刻など、多少は揺らぎは仕方がないところだろう。朝食をとらない子は成績が伸びない、というような断定的発言も、見る人が見れば頼もしい限りかもしれないが、ちょっと偏見を招くようなことがないだろうか、と少し心配してみる。
 とはいえ、概ねよいことが書いてある。スマホの管理なども、具体的でユニークなことが多々あった。これは参考にしてみるとよいかもしれない。中学に入ってからのためには小数はいいから分数をやれというのも説得力があるが、こも程度問題であって、実際小数のわり算であまりを出すという、小学生向けの問題が高校入試に出た事例もある。なんでも断定口調で言ったほうが力強く聞こえるものだが、どういうことでも少しは割り引いて聞くくらいのゆとりが読者にあったほうがよいかもしれない、とは思った。
 だが確かに、問題集をどのように使うかという具体的な事例は、確かに価値ある情報であるように思う。覚える時間の2倍以上を、問題を解くために使おうというのも、よく分かる。科目や項目により、多少の使い分けが必要だとは思うから、杓子定規には扱わないほうがよいかもしれないが、どうぞこれは大いに参考にしてほしいと傍からながら思う。
 特に、成績がよかった子に対して、「才能あるんじゃない」という言葉が禁句であることは、仰る通りである。このことについて何かひっかかりがあった私であったが、この本の説明はよく呑み込めた。次に成績がよくなかったときに悪い効果が出るというわけだ。確かにそうだ。しかし、早速帰宅してこれを使うチャンスがあろうことは、読んでいるときには予想していなかったけれども。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります