本

『こだわりパン屋を開く』

ホンとの本

『こだわりパン屋を開く』
土田美登世
ぺりかん社
\1680
2004.12

 珍しいコンセプトの本である。そして、ある人々には切実な情報を開示してくれる本である。
 パン屋を開くにはどうすればよいか。
 学び方から資金の準備、回転の様々な手続きまで、必要なことはありとあらゆることがこの小さな本に収録されている。私がもしも、パン屋を開く意志があったなら、バイブルのようにこれを座右に置き、この本に従って準備を進めていくことだろう。
 妻はパン職人の娘である。特別なこだわりをもったモダンな店だというわけではないが、義父は、パン会社の職人の一人として頼りある腕を買われて工場で働き通した。そこで、妻はパンの善し悪しは分かる舌をもっている。自分でも時折パンを作る。十分な設備がないために、工場のような完成度の高いものはできない。しかし、パンを作る楽しみというものは知っている。私も楽しいと思うし、子どもたちも興味をもっている。
 これを職業にしようと思う人もいる。そのとき、具体的に何をどう学ぶかばかりが問題ではない。そのためには実際幾らかかるのか。どのくらい売れるのか。どうすれば売れるのか。これもまた、切実な問題である。いくら好きなパンを焼くのだなどと言っても、売れなければそれを続けることさえできなくなるからだ。
 幾人かのパン屋を開いた成功者の紹介も、頁を割いてふんだんに取り入れてある。それだけ読んでも、苦労と喜びがひしひしと伝わってくる。さらに、パンについてのあらゆる知識やノウハウが、惜しむところなく掲載されているのだ。1600円は安い。
 監修は、大阪あべの辻調理師専門学校。京都にいた私は、その信頼度を十分知っている。これはもう間違いない。ほんとうにパン屋を開く気持ちのある人はもちろんのこと、趣味でパンを作るような人も、また、パンを食べることが好きな人は皆、この本を読んで感動するだろう。
 私も、ベーカリーを訪れるときの気持ち、眼差しが、読んでからずいぶん変わったような気がする。




Takapan
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