本

『はじめてのベビーマッサージ』

ホンとの本

『はじめてのベビーマッサージ』
大坪三保子監修
保険同人社
\1,200
2004.2

 言葉で命じて分かるものではない――子どもに対して、いつも言われることである。それは、小学生でも変わりない。子どもは、自分にとって敵か味方かを嗅ぎ分ける力をもっている。動物がそうであるように。
 だから、言葉というものは、しばしばごまかすために使うものなのだと感じる。新約聖書でイエスが、天国は幼子たちのものだ、と語るのも、そういう含みがあるかもしれない。言葉や口先で、信じます、という大人たちに対してはどこか悲しい眼差しを向けるのに対して、歩み寄ってくる子どもたちは、文句なしに可愛がってくださるのだ。
 赤ちゃんにはスキンシップが必要である。だから、母親というものはたぶん自然とそれをやっている。それなのに、この助産師である監修者は、わざわざそれを本にしている。マニュアル世代には、そうでもしなければ伝わらないものがあるということなのだろうか。ともあれ、こういうのがあると、何かと助かる。それはまた、男親が読むためでもあると見なすことはできないだろうか。
 この本は、間違いなく女親に向けて書かれている。そして最後には、母親自身のヘルスケアが紹介され、そのためにヨガが取り入れられている。さまざまな体験談をコラムに備え、Q&Aもほどよく配備されるなど、本ととしては実に読みやすく入りやすいように作られている。
 こういうものを、信仰崇拝するように利用する(される?)のでなければ、役立つことは間違いない。ときに子育ては、さまざまな信仰を強要してくるものだからだ。ある集団は、ミルクは絶対ダメで、完全母乳しか許さない。実際母乳が出ないケースもあるわけで、子どもの体重がどんどん落ちていくのに、母乳のほかは認めないとするなど、保険指導上困った出来事があるそうだ。逆に、保健指導をしますなどと大手スーパーの建物の中で行われる場合もある。利用する若いママも多いらしいのだが、そこでは決まってミルクが推奨され、可能なら全部ミルクにすべきだなどとる。当然だ。ミルク会社と提携しているのだから。
 人を育てるということは、どこかすがりたい気持ちも起こりがちなものだ。いわゆる宗教団体ならずとも、宗教のもつ危険性は、実はどこにでも潜んでいる。
 というわけで、この本は楽しく利用して戴きたいものである。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります