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『遊べる理科の教科書』

ホンとの本

『遊べる理科の教科書』
天動説研究会編著/ワニマガジン社/\1,300/2003.10

 最近は、この手の本が増えている。おもしろ理科実験ふうに、科学的な仕組みを含んだ実験やオモチャを親子でやろうとするタイプの紹介本だ。夏休みの自由研究のためと題したものもかなり多くなった。それらには「研究」の名に恥じない立派なものが紹介されており、しばしば特殊薬品やけっこうな道具を要求する。夏休みのことだ、と親もそうした材料には協力を惜しまない。本の通りにさえしてくれれば子どもだけでやってくれ、親に助けを求めることがないというのも魅力だ。いや、それでもたぶん親に何とか言ってくるのだろうけれど。はたして、この本の通りにやってみたことが「自由研究」なのだろうか。大いに疑問が残る。ニーズはあるのだろうが、何でも準備してやって、その轍を通らせることを楽しむ大人。いや、ビジネス。少なくとも、そこに「自由」の名を冠してほしくはないと思う。
 さて、この本はどうか。件の理科実験や自由研究の本が、しばしば大がかりな準備や特別な薬品などを必要とするのに対して、この本は、実にシンプルな実験が多い。紙一枚で済むものもあり、ちょっとした素材で実験ができる。1ページに一つの実験が説明されるくらい単純なもので、しかも簡単な原理も説明されている。全部で80の「手品」が用意されているので、気軽にいくつでもやってみたくなるものがある。
 これは子どもの自由研究には適さない。たぶん、親が子どもにやって見せるような性格のものなのだ。幼児でも喜ぶだろうが、小学生がやはりターゲットであろう。一つのことをするのに準備を合わせても5分と時間がかからないものばかりで、そのうえ意外な結果に効果が抜群。
 何がよいって、私はこれを、教会学校の遊びに使える点で最高の教科書だと思ったわけだ。
 ではどんな実験があるのか……それは、実際にご覧になってからのお楽しみとしておこう。
 とは言いながら、たとえば最初の手品を例に挙げよう。昔からある有名な「踊る一円玉」というものがあり、ビンの口においた硬貨が、ビンを両手で温めると踊るというものだが、この本ではそれを、ビンに触りもしないで踊るしかけを紹介している。炭酸飲料に食塩を入れるというのだ。
 また、風船に串を刺しても割れないというのは、セロテープを貼っておくというのはよく知られたことだが、この本では、サラダ油をある場所に塗ることによりそれを可能にすることが書かれている。
 厭きない本だ。




Takapan
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