本

『大人が楽しむ アサガオBOOK』

ホンとの本

『大人が楽しむ アサガオBOOK』
田旗裕也・浅岡みどり
家の光協会
\1470
2010.4.

 タイトルの通りである。手に取りやすい、小型の週刊誌状の形容で、そこにアサガオによる緑のカーテンが作られている様子が写っている。派手ではないが、心落ち着く風景である。
 園芸の本は多々あれど、この本はまさに純粋にアサガオに徹している。
 アサガオといえば、小学一年生が最初に行う土いじりが、アサガオの種蒔きである。右も左も分からない一年生に、こうやって土を入れて、穴を開けて、種を植えましょうと指導する先生方の苦労はいかばかりか。逆に言えば、アサガオの種蒔きは、それほどに簡単だと見なされている。確かに簡単だろう。育てるのも、ことさらに苦労はいらない。朝に水やりをして、ほうっておけば勝手に育つというのは本当である。しかも、生長が早い。春の終わりに蒔いて、夏には綺麗な花が咲く。小さな鉢にぐんぐん育つ。文句なしだ。
 だから、大人にとって、それは扱うのも恥ずかしいような植物なのだろうか。いや、だからこそ、育ててみたいと思うかもしれない。素人の私はそう思う。
 だが、だが、である。これが奥深いのである。そのことを、この本は教えてくれる。小一でも扱える植物が、実に深みのあるものだということを教えてくれる。この渋さというのが、日本人の美意識にマッチする。簡単そうなものが、実は難しい。誰にでも分かる世界の入口があって、その奥には無限の世界が拡がっている。
 考えてみれば、そういうアサガオの生長におけるあらゆるケースにおいて、ひとつひとつ写真入りでこのように手入れをする、などという指導は、それほどなされているわけではない。実際に育てた人ならば、試行錯誤のうちに行ったであろうようなテクニックが、事細かく記されている。
 品種の説明、ほどよいQ&Aがある。手入れの過程のひとつひとつの手順が写真入りで解説されている。写真や説明のレイアウトなども、実におしゃれで魅力的である。
 著者のお二人は、NHKでの活躍もあるようだ。分かりやすく、誰にでもやってみようという気持ちを起こさせるような方法を、十分身につけているのだろう。お一人の名前がまさに「みどり」。天来のお名前であるのかもしれない。




Takapan
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