本

『自然がつくるアート』

ホンとの本

『自然がつくるアート』
ガリレオ工房編
伊地知国夫・写真
滝沢美絵・文
大月書店
\1890
2004.3

 美しい写真。この本は、「びっくり、ふしぎ 写真で科学」のシリーズの6だそうである。他のものを見ていないので、この本だけの感想を述べると、美しい、これに尽きる。
 身近なものを、ミクロのレベルで見ると、なんと神秘的な、新鮮な写真が現れることよ。赤インクが、まるで月のクレーターのような形で赤く並んでいる。重曹の結晶も、ゆっくり作ると、線香花火のような木の枝のような、白い輝きが伸びてゆく。
 偏光顕微鏡で撮影しているので、ときに結晶は七色に散らされて見える。それがまた、美しい写真の理由となる。
 実験グループの撮影であるだけに、ただ写真を見せるだけではつまらない。雪状の結晶を冷蔵庫で作るにはどうすればよいか、説明が加えてある。実験室では、尿素を使うと枝状に結晶が伸びやすいとされているが、水でも、冷蔵庫の中でうまくトゲ状の結晶にすることができるのだ。
 個人的には、モアレが楽しい。細かい平行線をたくさん描いた透明な板を重ね、微妙にずらすと、不思議な模様が現れてくるというものだ。OHPシートさえあれば、パソコンを使ってプリントアウトしてすぐにモアレの実験ができる。人間の目には、現実にそこにはないはずのものが、平気で見えてしまうのだということが、よく分かる。
 水に落としたミルクの様子や、線香の煙が渦を巻く姿も、ため息が出るほどに美しい。
 終わりの方では、プランクトンなどの姿も取り上げられるが、繊維やホコリの写真は驚異的だ。
 最後に、この本の写真の撮影方法が紹介されている。写真フィルムの両端の穴にシャボン膜ができるようにすると撮影しやすいのだとか。他にも具体的に方法がばらしてあるので、それを見るだけでも楽しい。子どもの目の前で実験すると、ちょいとカッコイイ大人になれるのだが……。




Takapan
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