本

『安全・安心の基礎知識』

ホンとの本

『安全・安心の基礎知識』
監修・総務省 国民安全事典編集委員会
発行・(財)全国危険物安全協会
ダイヤモンド社
\2,000
2004.3

 危険に対する備えや、危機管理能力が問われる世の中である。
 だが、その言葉はあまりにも漠然としていて、示す意味の範囲が広い。それらを総括して考えようとすると、問題が多岐にわたる。なかなか個人としてそれを捉えて訴えることはできない。個人としては、限定された内容において、危機管理を促す程度となるだろう。そこで、総務省のまとめとして、分厚い本がここにできた。
 章として紹介しよう。「救急・救助」「交通事故」「犯罪」「高度情報化社会とインターネット」「火災」「自然災害」「人為事故やテロ災害」「災害時に活動する組織」「災害時のライフライン」「子育てとDV(家庭内暴力)」「日常生活」「老後」「ごみ・環境」「旅行」「保険」の15の項目がこの本の内容である。
 編集委員やスタッフも、大学教授のほかに研究所長、理事長、保安室関係の役人など、相当の責任にあるメンバーが揃っている。さしあたり信用するに値する本である。
 お役所仕事からできた本だけに、面白みはありませんが、統計や数値表を必ずもちだすことや、Q&Aの頁を多用していることなど、説得力と分かりやすさも意識されている。
 この本を見ているうちに、『家庭の医学』のような名の医学書のことを、ふと思い出した。たしかに、あると便利である。何か気になるときに、そのことをどういう方向で考えていったらよいのか、不安を少しでもなくすための材料として役に立つはずである。だがまた、これだけでは安心しきれないのも事実である。目の前の病気の事例が、短い記述の中の説明に合致できるのかどうか怪しいし、だからどうなのか、とその先を知らなければ落ち着かないようになる。結局専門医のところに出かけるということになるので、その本だけでは完結できない。
 一冊常備しておくと、不安解消には役立つだろう。そして、そこから次に何をすればよいかの指針となりうるであろう。その意味で、使える本と言えるかもしれない。だが、いざ急病のときに医学書どころではなかったりするように、危険な状況になったときにも、この本を調べる余裕はおそらくないであろう。となれば、ふだんから読んで知識としてもっておくべきだということになるが、はたして必要を感じないときに読んでも頭に入るのかどうか疑問であるし、そもそもこの厚い本を読み通せるのかどうかも問題である。
 とはいえ、私たちの関心を寄せがちな事柄について、相当詳しい情報も一部あるのは間違いない。まるでインターネットで検索する情報を一冊にまとめたような本であるが、使い方によっては大いに助けになるであろう。ただ、統計資料もすぐに古くなる。法律も改まる可能性がある。こうした本は、年鑑的に、毎年継続して出版し続けるというのが、あるべき姿ではなかろうか、と思う。手元のこの本は、そういう形にはなっていないようだが。




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