本

『そして僕は、今日も歌おう』

ホンとの本

『そして僕は、今日も歌おう』
陣内大蔵
日本キリスト教団出版局
\2000+
2009.10.

 陣内大蔵さんの本は、以前も「僕んちは教会だった」というものを手に入れ、ご紹介した。
 シンガーソングライターとして自らも歌い、またアーチストに楽曲を提供してきた人だが、なにを隠そう、教会に生まれた男子である。教会を飛び出すようにしてその世界に入って行ったのだが、結局教会に戻ってきた。つまりは牧師となったのだ。その立場で歌をまた歌い、通常の「賛美歌」とは違うかもしれないが、そういうスピリットで歌を生産し、人前でも歌うことが多々ある。そのコンサートリストも本書には掲載されているので、その精力的な活動には驚くばかりだ。本書発行時にすでに40代半ばであるが、エネルギッシュに活動している様子が窺える。
 先の本だと、幼いころからの体験が生き生きと描かれ、個人的には非常に楽しめたが、今回は、その教会でのコンサート活動がメインであるため、ある意味でどのエッセイも同じようなことが書かれているきらいがある。もちろん、一つひとつの出会いは異なるし、出来事も様々なのであるが、各地での活動の中で知ったことや起こったことが中心であるため、前作ほどのはらはら感やわくわく感は伝わってこない。落ち着いた活動をしているのだという、喜ばしい様子はよく伝わってくる。
 だが、だからこそ、「そして僕は、今日も歌おう」ということなのだろうと思う。気取らず、構えず、神に生かされている自分と人々とをよく感じ、その中から歌という形で心をつなぐ働きを果たしている、その証しである。
 本書は、CDが附録についている。小さな薄い本である割に値が張っているのは、そのためである。実績のあるアーチスト本人の作品でもあるから、これはやむをえないところだろう。私もこれが定価だったら手に取らなかっただろうと思う。申し訳ないが、中古市場で十分の一の価格で見かけたために持ち帰ったという次第である。
 帯には、平松愛理と中西圭三の賛辞が載せられており、よい宣伝になっている。キリスト教の教義的なものを感じさせない、爽やかな作品が、多くの人の共感を得ているという具合だろうか。さすがに90年代のシンガーとしての知名度は現在行き渡っているとは言えなくなっているが、久保田早紀はいまかなり知られるようになってきている。何かのきっかけで、また世間の耳目を集めることにもなりかねない。そんなきっかけとなればこうした本もまたもっと知られるようになるだろうが、さて、それを求めるべきなのかどうか。いずれにしても、キリストという方に人々の心が向くかどうか、それが問題なのだ、とパウロなら言うであろう。
 だからまた、とりあえず、いま今日このときに、私もまた、いまできることを誠実に続けていこう。それがまず一番だ。




Takapan
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