『赤ちゃん学を知っていますか?』
産経新聞「新・赤ちゃん学」取材班
新潮社
\1,300
2003.5
以前、うつぶせ寝がいい、という説が流行したことがある。先進的な産院では、産まれた赤ちゃんを早速うつぶせにして寝かせ、それがずらりと並んだ写真を見たことがあった。だが、今はそういうことはない。うつぶせに寝かせると、呼吸障害の原因となって死に至るか、あるいは呼吸障害が起こったときに悪影響を及ぼし、死に至らしめると認められてきたせいである。
赤ちゃんの世界の常識は、しばしば流行のように移り変わる。最近では、2002年年度より、「断乳」という言葉が、母子手帳から消えている。むりやりにでも母乳を断つ試練が必要だとされていた考えが、保健所の指導からなくなったのだ(ただし歯科衛生士は歯のためには、いつまでも母乳を飲むことについてよくない影響も考えているらしい)。
実は、赤ちゃんについては、まだよく分かっていないことが多すぎるという。
赤ちゃんの育て方なる本はたくさん出回っている。よく書いてある。役立っている。だが、それは親からの視点である。母親から、あるいは(稀だが)父親からの視点で、子どもの扱い方が紹介されている。それはそれで有用で、利用価値がある。だが、ほんとうにそれでいいのか。赤ちゃん本人からの視点というものは、どうなっているのか。
ようやく最近になって、世界中で、そうしたあたりまえのことが問題とされ始めた。赤ちゃん当人はどうなのか。そこから見て、どうなのか。親から見て、どう扱ってよいのか分からないぐにゃぐにゃの赤ちゃんのトリセツ(取扱説明書)というのでなく、人間としての子ども本人はいったいどうなっているのか、という点を第一に置こうという考えである。
新聞に連載された特集が、ここに一冊の本となった。紹介してあることに幾つか触れてみよう。まず這い這いが脳に刺激を与え、発達させるというのは、私も薄々感じていた。小麦アレルギーの存在は聞いていたが、胡麻アレルギーは、初耳だった。乳児期にテレビを見ると、悪影響、たとえば言葉の発達が遅れるなどの弊害が起こることも、ありうるだろうとは思いつつ、今はデータとして定まってきていることを知った。アメリカでは、1999年から、2歳以下の子にテレビを見せるなと指導しているのだ。
結局、笑いかけたり声をかけたりして、親が子にコミュニケーションのサインを送り続けることが如何に大切かなどの、常識的とも思える結論さえ随所に出てくるのだが、それも、一定の科学的根拠とともに初めてテーゼが力を持つ状況となってきている。
「日本赤ちゃん学会」はホームページももっている。今まさに赤ちゃんのいる私のような立場の人はもちろん、かつて赤ちゃんを育てた方々も、覗いて戴きたい。それは、将来の人間、つまり未来をつくるための、大切な大切な礎となることなのである。