本

『Dr.サカキハラのADHDの医学』

ホンとの本

『Dr.サカキハラのADHDの医学』
榊原洋一
学習研究社
\1,700
2003.12

 そわそわ落ち着かない子ども。ひとつのことに集中できない子ども。人の話がじっくり聞けず、衝動的に行動してしまうタイプの子ども。決まりが守れず、授業にも身が入らない。配られたプリントを失くしがちで、服装もだらしない。友だちと何かとケンカを起こす。
 程度の差や状況によって呼び方にいろいろ違いはあるものの、上のような特徴が重なる子どもについて、「注意欠陥多動性障害」という診断がなされるようになったのは、さして古いことではない。これを、英語の頭文字で代表して「ADHD」と称するようになってから、人口に膾炙し始めたと言ってよいだろう。
 かなり専門的な説明もあるので、ハウツー本のつもりで読むことはできなかった。その分、内容の正確さや説明の緻密さについては、立派な説明がなされていると言わざるをえない。かといって、専門書ではないし、特別な用語が羅列されていたり、読むために特別な知識を要したりするわけではない。図解や一口雑学的な本に慣れ親しんだ人には苦しいかもしれないが、文章ばかりでも耐えられるなら、かなり参考になる本と言えるだろう。
 読み進むと、リタリンという薬物による療法を推奨していることが分かってくる。精神的な病状に携わる人の中には、薬を利用すべきだという人と、利用すべきでないという人とがいる。著者は、利用すべきだと考えるタイプであるように思われるが、あくまでも自分の意見の押しつけでなくさまざまなケースの紹介であろうと徹するがゆえに、薬物ではない療法のためにも、公平に頁を割いている。
 どうぞ問題を抱える方は、さまざまな方面を活用してください。素人がこうした本でよい方法を実行できるようになるとは、まず思えないので、専門医などに相談をすべきである。しかし、社会の私たちが、そうした子どもの状態や痛みといったものを理解する必要もある。社会の温かな目が、子どもを守り育てる働きがあるのだ。




Takapan
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