本

『アカデミー賞のすべて』

ホンとの本

『アカデミー賞のすべて』
共同通信社
\2100
2007.4

 映画通の人は、ここにあることなど、すべてご存じなのかもしれない。しかし素人の私としては、十分楽しめる本であった。
 1928年から2006年に至るまで、アカデミー賞に関するすべての記録と、コメントが掲載されている。もちろん、名場面の写真も一コマずつであってもちゃんとそこにあるので、よく分かる。さまざまなエピソードにも触れてあるので、映画が少しばかり面白いと思える程度の者には、驚きの連続である。
 人により、注目する年代が異なると思う。やはり自分が映画をよく観た時代というのは外せないことだろうが、私は、妙に白黒の映画を好んで名画座に観に行ったという過去がある。
 また、最近とくに、信仰的な内容を扱った古い映画を観ているため、それらがちゃんとこの本に載っているのを見て、信仰的な事柄が普通に受け取られる文化というものも改めて感じた。
 ここには、ノミネート段階の作品も記されているので、幅広くこの賞について知ることができる。たとえば、『我が道を往く』で1944年に助演男優賞を受賞した老神父役のバリー・フィッツジェラルドは、なんと主演男優賞のもノミネートされている。ノミネートのルールにも影響を与えた事件なのであった。
 賞がそれほど権威をもつべきなのかどうか、私には分からないが、たしかに、こうして受賞した映画は、後世に遺っている。当時の流行ゆえに興行成績がよかったというだけの映画では、ここまでにはならない。人生を考えさせる、そんな作品が受賞して、後々にまでファンをつくっていく。文学と同じで、そうでありたいものだ、とも感じた。
 近年、ロードショーを全く見に行かない私である。ハリウッドの衰退もあり、アジア映画の認定その他、映画とは何だろうかという問いかけもあることだろう。映画はどこに行くのか。メディアの嵐の中で、私たちは、2時間ほど、静かに祈るかのように、スクリーンに向かって立ち止まることができるだろうか。




Takapan
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