本

『生きもののワォ!』

ホンとの本

『生きもののワォ!』
松橋利光
大和書房
\1500+
2019.5.

 2016年くらいからだろうか、「ざんねんないきもの」の事典が出回り、評判になった。以後、類似のコンセプトによる本が大量に出て来ている。本書もその一つなのかもしれない。なんだ、そんな動物の不思議さがウケるのか、じゃあ私も知っているよ、もっといろいろ紹介すれば売れるんじゃないかな。こんな心理が背後にあることを推測した。
 動植物は、神秘に満ちている。というより、人間のあずかり知らぬことがあまりにも多い。へたをすると人体についても何も知らないに等しい私たちだが、動物となると奇想天外な面白さが倍増するものだ。
 あとは、その本の構成や叙述方法が影響するだろう。本書も、写真をふんだんに活用している。しかしただ写真を並べるのではなくて、基本的にそこにセリフを書き入れ、説明の吹き出しを加える。あとは、長すぎない解説を入れて、それからなんといっても、タイトルのセンセーショナルなことが、ひとの気を惹く。
 本書の場合は、「ウサギは自分のウンチを食べちゃうんです」「イルカの鼻はあたまの上」「ヘビの鼻は口の中」「ウミガメの子、30度以上で女になります」というように、「えっ」と思わせるような誘い文句を掲げれば、それだけで楽しくなる。「タランチュラにかまれても死にはしない」「ミツバチはスプーンい1杯に命をかける」なども興味をもたせるのにいい。
 有名なものもある。「タコのあたまは胴体」「カタツムリはコンクリートがお好き」「おくびょうなピラニア」などは、よく知られているものかもしれないが、そういうのが混じることで、読者の自尊心を満足させるから、すべてが意外でなくてもよいはずだ。
 とにかくこうした話題が最後まで続き、100頁あまり楽しめる。漢字も少し減らし、小学校低学年の子も読めるように、すべてふりがなが付けてある。生きものに興味をもってほしい、そういう願いがこめられている。そして、生きものを「見学」するのではなく、「観察」してほしい、と「おわりに」で、カメラマンの著者が訴えている。このコンセプトが、制作者たちの心を表しているとも言えよう。すでにシリーズのようにして、生きものの飼い方や触り方についての本を著しており、子どもが生きものと触れあうことを願って、日々活動をしているようである。
 ちょっとだけ表紙が地味かもしれない。キリンの首から上だけで地味なので、その首の骨の数が人間と同じだという、最初の項目の写真が使われているのだが、そこを読まないとピンとこない写真である。ここに「おっ」と一目で思わせるものがあったら、もしかするともっと売れるのかしら、とも少し思った。




Takapan
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