本

『今生きるヴォーリズ精神』

ホンとの本

『今生きるヴォーリズ精神』
佐々木伸尚
晃洋書房
\1470
2005.3

 ウィリアム・メレル・ヴォーリズについては、その多大な功績で広く知られていることだろう。建築が一番有名だろうが、メンソレータムの販売についても知られている。もちろん、キリスト教伝道にかける思いは、とくにクリスチャンにはチャレンジともなるべく、輝いている。とくに、彼がいわゆる宣教師ではなかったという点において、そうである。
 だがまた、学校教育への貢献もまた、注目されるべきものをもっている。
 ここに、その近江兄弟社学園を今後継する人々が、ヴォーリズが近江八幡に降り立ってから100年を記念して、一つの本を出版した。その中学校長である佐々木伸尚氏が、生徒へ向けて語りかけた、印刷物の文章をひとつにまとめたときに、随所に記されたヴォーリズのエピソードの他、ヴォーリズの名が出されないときにも、貫かれたその精神が、本全体から香り漂うこととなった。
 必ずしもこの本は、ヴォーリズの評伝とは言えず、またその研究のために大いなる助けとはならないであろうことが予想されるにも拘わらず、若い人々への影響を考えると、大変大きな業績を、この本で成しておられるのではないかと考えている。
 私もまた、機会あるごとに、子どもたちに、聖書のスピリットを伝える文章をぶつけていくことを心がけていた。京都時代に教室で生徒に出した成績表のタイトルは「からしだね」であったし、それ以前に殆ど個人的に教えていたに等しいところでは、「ソロモン通信」というものを発行していた。
 だから、この校長が事ある毎に記しているような、この本にある文体が、痛いほど理解できると言ってよい。ある意味で、私は今なお、その路線で走っているのだ。
 教育をする立場にある方や、教育に関心のある方、またお子様が教育を受けている保護者の方々など、およそ教育というものに心を寄せている方であれば、この本の語りかけの良さが、ひしひしと伝わってくるのではないかと思われる。その意味でも、教育関係の方々に、広くお読み戴きたい一冊である。




Takapan
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