本

『会社のSNS担当になったらはじめに読む本』

ホンとの本

『会社のSNS担当になったらはじめに読む本』
落合正和
すばる舎リンケージ
\1400+
2020.3.

 SNSマーケティングの基本を説く本。極めて実用的である。が、基本というものは何度学んでもいい。何か役立つ視点が与えられる。むしろ、衒うかのように目立つ妙なテクニックを餌にしたものに心を奪われると、大いに失敗するだろう。
 的確に「会社の」と形容されているから、これはビジネス目的であることが明らかである。私は教会関係のSNSでも学べるかな、と期待したが、やはり向いている方角が違い過ぎた。しかし、それでも基本的にSNSがそれぞれどういう特色があるとか、その仕組みや規定などについては、知ってよかったと思うこともあった。
 あまり無理しないのもいい。Twitter; Instagram; Facebook; LINE の4つに絞って取り扱っていく。企業ならそれで十分だろう。それでいて、結局こうたSNSは、友人との交流のために皆やっているのだから、呼ばれざる客としての企業の広告はどういう風景に見られているかを意識するべきだ、というように、当たり前ではあるのだが、つい忘れがちになる点を適切に指摘している。こうしたアドバイスが、ちょっとしたことのようで、はっと気づかせてくれる場合が多いものだ。
 現実にどのくらいの人が利用しているのか、その年代はどうなっているか、こうしたことも、利用しようとする者にとってはヒントになるだろう。もちろん、それは時とともに移ろい行くものだ。とりあえず2020年初頭ではこういう雰囲気だった、という程度に理解しておき、その都度のデータはまた時折気にして、調べてくるというふうにするのがよいだろう。Facebookを大々的に伝道のツールと理解して展開している教団があるが、これだけ若者の目につく機会は非常に低いと言わざるをえない。みんなやっている、その「みんな」が結局老年かそれに近い人々であったとなると、また記事や扱いが違ってきて然るべきなのだ。Facebookが実名ベースでいくという特異な基盤の上に成り立っているせいもあるだろうが、こうした種類別の特色なども、知ると知らないとでは大いに使い方が違ってくることになるだろう。
 著者は、ハッシュタグを重視している。現実にそこからの検索が多いというが、これまたあまりに多いハッシュタグだと、多すぎてその中に立ち現れるのが難しい。そのバランスの妙の理解が必要となるだろうが、この辺りの叙述がさらりといっているから、読者は細かなところもよく弁えておかなければならないだろう。
 現実的にどんな記事がよいのか、どういう書き方、どのくらいの量や頻度がよいのか、そうした具体的なことまで触れてある。著者だけの考えが混じっている虞はあるが、概ねその理解でよいだろうと思う。特に、炎上した場合のタブーというのが強く書かれているのは、そうした時には慌ててうろたえてしまうものだから、よく考えておくとよいだろうと思われる。
 実際の企業の記事の作成見本も随所にあるので、理屈ばかりでなく、ひとつのアルバムとして楽しめる。そうして、適宜まとめていくと、説得力が増す。たとえば「成功するコンテンツが持つ」ポイントとしては、・タイムリーである ・親しみやすい ・共感できる ・役に立つ ・ユーザー参加型である と挙げられている。抽象的ではあるが、その横には、ソフトクリームを雲で表現した、なかなかインパクトのある写真が目に入るように置かれている。そして、こうしたポイントがどのように活かされているかがコメントされている。
 また、エンゲージメントという概念を著者は重視する。この定義はSNSにより多少異なるというが、著者なりに話を進める上でまとめたものは、「投稿したコンテンツがどれだけユーザーに喜ばれているかを計るためにエンゲージメント率によって効果測定ができる」とし、そのエンゲージメント率は、「ファンやフォロワーから投稿したコンテンツがどれだけ愛着を持たれたかを数値化したもの」だと説明している。要するに好感度といったような向きで捉えてよいものなのだろうが、この問題に写真をどう取り入れるかなど、知っておくべき知識が並べられている。
 長くtwitterなどをやってきた人にとっては、すでに経験的に知っていることが多いとは思われるが、自分の経験に縛られず、多くの基本は耳にしたほうがよいだろうと思う。そのアドバイスはどうぞ本書で直に触れて戴きたいが、さて、会社のSNSを任されるに相応しい人とはどんな人か、最後に掲げているものの一部はご紹介しておこう。それは、知識のある人、詳しい人ということが最優先されるべきものではなく、「コミュニケーション能力」の高い人であるという。考えてみれば当たり前なのであるが、これを第一に人選するというのが、一番効果的であるだろうことは、その通りだろうと思う。その意味で、私は人選として間違っているということになる。これでよかったのだろうか。




Takapan
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