『The Rabbits' Wedding』
GARTH WILLIAMS
HarperCollinsPublishers
1986.
有名な「しろいうさぎとくろいうさぎ」の英語版である。印刷は香港のようだが、図書館にあった、ソフトカバーの絵本である。絵はもちろん日本語版と同じ。ただ全編英語である。
英語力のない私でも、一部の特定の植物の名前のほかは読み取れた。小さな子どもでも読める英語で書かれてある、ということなのだろう。同じ対話を繰り返したり、同じ心配を繰り返したりするところが、絵本の強みであるが、英語を試してみたい学生にもよいのではないだろうか。中学生でも、ほぼ大丈夫かと思う。
しろいうさぎとくろいうさぎがいて、楽しく遊んでいた。だが、ふと、くろいうさぎが悲しげな顔をする。どうしたの? しろいうさぎが心配して訊く。いや、なんでもない。くろいうさぎは、考え事をしていただけだよ、となかなかその心を明かさない。
絵本とはいえ、そして有名であるとはいえ、これからお読みになる方もいるだろうから、ここから先の展開は伏せることにする。だとしても、お察しのよい方はもう想像ができていると思うし、その想像を裏切らない、安心できる方向で物語は進んでゆく。日本語版と異なり、英語の原題では、その結末をもう最初から明かしていることになるわけだ。
ただ、英語でいま読んでいると、日本語で読んだときと、少し印象が変わったところがある。確か日本語では、悩んでいるくろいウサギが、「ぼく」と言っていた。だが英語では、「I」でしかない。しろいうさぎとくろいうさぎ、どちらが男の子でどちらが女の子なのだろう。しろい方が女の子で、くろい方が男の子だ、と決めつけてよいのだろうか。それを作者が意図していたとしたら、私たちが思い込んではならないはずである。
だが、一箇所、作者はくろいうさぎの性別を漏らしてしまっていた。「……he sailed right over the little white rabbit's back.」くろいうさぎが「he」である。英語には、このように男女を明確に示す代名詞の性格がある。そのため、現代では性別問題についてナーバスになる余り、これが問題になることがあるらしい。
ところがまた、本書はかつてアメリカで大いに議論になったことがあるという。1958年発行の本書は、人種差別の国アメリカでよく売られた。これは異人種間結婚ではないか。そう問題に挙ったのである。その結婚が合法化されるのは、その後9年経ってのことであり、白人市民評議会は、焼却処分にいろと息巻いたというのである。作者は、政治的意図はないと言明したというが、論争は収まらなかったという。
そのような事情を頭に置いて読むと、この小さな絵本には、とても深いものを感じざるを得ないし、また日本人もまた軽々しく、気づくことなく犯しているであろう差別というものについても、考えさせるものを覚える。
誰もが純な心で読む絵本、それは、絵本が人の心を純にする、ということなのかもしれない。

た
か
ぱ
ん
ワ
イ
ド