本

『Q.E.D. 証明が生みだす美の世界』

ホンとの本

『Q.E.D. 証明が生みだす美の世界』
バーカード・ポルスター
青木薫る訳
ランダムハウス講談社
\1470
2005.11

 なんとも美しい本である。装丁も美しい。文字も茶色でお洒落である。小さなサイズで手軽である。「ピュタゴラス・ブックス」と名づけられた、数学の、センスある本に冠するに相応しい名前だろう。
 見かけからすれば、これが1400円というのは高いと思われそうだ。だが、内容が濃い。
 数学で証明というと、中学で最初に学び、高校入試には必ず出題される。もちろんその後の数学ではずっと続く。ただ、学校の証明というのと、たとえば矢野健太郎先生の本でよく出てくるような「エレガントな解答」というのは、必ずしも一致しない。美術で言えば、きっちりしたデッサン力というのが学校の証明であるならば、作品としての美や感動が、エレガントな解答の部類となるだろう。
 私も、この本の中からいくつか、「ほぅ〜」と溜息が漏れた。いや、それは単に私が無知であるせいである。数学の専門教育を受けたわけではないので、教科書とは違う証明をこうも並べられると、感動するということなのかもしれない。
 それにしても、この本を読みこなすのは大変だろう。数学を日常何らかの形で扱っていないと、読みにくいのではないか。これは訳の関係なのか、原文が素っ気ないのか、一読して理解しにくい説明や条件づけが、いくつか見られた。私の理解力が劣っている点はもちろんなのだが、たとえばこの本の一つのポイントになる「カヴァリエリの原理」には、もしかするともう一つ代名詞があるのではないか、と勘ぐる。代名詞が省略されたとしたら、そのために、意味が理解しにくい文となっているように思われるのだ。
 それはそうと、面白い。こんなに面白い数学の本も珍しい。必要最小限の説明しかなされていないために、数学について多少の知識が要求されるが、その前提があるならば、楽しめるシリーズである。ほかにも何冊かあるようだ。




Takapan
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