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『「ポツダム宣言」を読んだことがありますか?』

ホンとの本

『「ポツダム宣言」を読んだことがありますか?』
山田侑平訳・監修
共同通信社出版センター編集
共同通信社
\900+
2015.8.

 読んだことがなかった。それでこの薄い本、福知山の書店で見つけたものの、結局福岡で配達してもらう形で購入したのである。
 日本文もあるが、原文で分かりづらい古語調のものは、現代語に訳してあるものもあった。また、英語の原文も紹介されている。
 歴史上有名すぎるし学校でも学ぶし、そもそも読んだことがないというのはある意味で不思議なことではないと言わざるをえないが、えてしてそういうものである。だからこのタイトルはまことに痛いところを突いていると言える。
 しかし原文をぼんと載せればよいとは編集者は考えず、まずはポツダム宣言とはそもそも何であるのか、というところから簡単に説明した上で、日本語訳文に入るが、しかも例の古語調とカタカナの原文であるが故に、それを現代文に直したものも並行して見せてくれる。若い人もこれならば抵抗なく読めるだろう。
 なんとかなくイメージしていたものと、ずいぶん違うものを感じるのではないだろうか。また、そこに記された内容が具体的で生々しいと思えないだろうか。歴史の内面がより身近になるということで、こうした文書に触れることは本当によいことなのだと思った。
 さらに頁を改めて、英文も紹介され、単語などは十分に解説を入れている。英語で見ると、また生々しい。支配することがcontrolであることや、武装解除するなどという堅苦しい日本語がdisarmで済むことなど、発見がたくさんあるのではないだろうか。
 その後歴史的な概観を写真を以て辿ってから、降伏文書、そしてカイロ宣言が、もう英文と文語体と現代語と一緒に示されていく。
 最後に史料として、英文の必要のない、終戦の詔書、すなわちいわゆる玉音放送の原稿や、鈴木首相の談話や各国大使公使などの電信文まで載せられている。読み応えがある。
 小さな本であるが、歴史を動かした文書をこれだけ手際よくまとめたものとして、価値が大きい。こうした良い企画は、もっと知られてよいだろう。地味だが、歴史学者だけの興味の対象などにしてはならない。一人ひとりが、これを背負っているのだという意識をもてないだろうか。そして若い世代に伝えて行けないだろうか。そう、切に思った。




Takapan
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