本

『きみはポラリス』

ホンとの本

『きみはポラリス』
三浦しをん
新潮文庫
\590+
2011.3.

 詳述はしないが、小説の書き方について、三浦しをんさんがよいことを書いている、という話を聞いた。実は、三浦しをんさんの小説を、私はたぶん読んだことがない。『舟を編む』の作者だと聞くと、あの人か、と分かるのだが、これも小説としては読んでいない。続いて読みたいと思うようになった。
 この短編小説集も、評判がよいので、短編なら細切れに読みやすいかも、と思い、図書館で借りた。が、それは単行本のほうだった。電車内で読むには重いと思っていたら、かなり安価で手に入ることが分かり、文庫本を入手した。そして、通勤電車の中で、ひとつかふたつの話を、毎日読むようになったのである。
 中村うさぎさんが、「解説」を入れている。そこには、本書の読み方についてネタバレ的なものが書かれてあるため、どうぞ本編を読み終えてから、「解説」をご覧戴きたい。また、私も心配していたが、ふつう本書のタイトルと同題の短編が中に含まれているものである。あるいは、全体を貫くテーマだと言えるような題が付いているものである。しかし、どうやらそれが見当たらない。この辺りも、「解説」で触れているので、後からお楽しみ戴きたいものである。
 さて、本書には、11の短編が並んでいる。たとえば私の好きな乾ルカさんだと、短編集でありながら、一続きの場面が描かれており、一つひとつは独立しているとはいえ、何かしら類似の展開や傾向が見られるのであった。そうやって、たとえ独立していても、一冊の集まりの中に、何かしら納得できるテーマなり描写なりが感じられたものである。しかし、本書は、一つひとつの物語が、全く傾向が違うというふうに感じられる。男女の中心性もだが、その人物設定も、ジェットコースターのように、読む度に違うタイプの人物が目まぐるしく変わってゆく。先ほどの話のおとなしい主人公が、次の話でははちゃめちゃぶっ飛んでいる、などという経験を、読者はするだろうと思う。様々な性格の、様々な立場の人が登場する。読者はどこかに自分に似た人を見つけるだろうし、自分に似ていない人に対しても、つい感情移入をしてしまうのではないだろうか。
 だから、たぶん退屈しない。
 私の下手な感想よりも、本の帯に宣伝された読者の声をご紹介することにしよう。
 恋は苦手、そんな人にこそ読んでほしい!
 好きな人にどうしても合いたくなる、不思議な本
 恋愛小説、と簡単に片づけたくない。こんな小説初めてです
 私の恋だってわるくない!と、とても勇気づけられました
 こんな声を集めた帯に、大きなピンクの丸が掲げられ、そこに、決定的な宣伝文句がくる。「すべての恋愛は、普通じゃない。」「最強の恋愛小説集」――必ずしもこれが、ただの大袈裟な宣伝文句に過ぎないものではない、というのが、私の感想である。
 因みに、「ポラリス」とは「北極星」のことだ、と、帯の裏側に掲げられている。けれども、先ほど触れたように、これがこの短編集の象徴というふうには、しなくてよいかもしれない。が、何かしら象徴性を見つけたら、それは読者の、個人的な宝物になることだろう。




Takapan
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