本

『子どもに言った言葉は必ず親に返ってくる』

ホンとの本

『子どもに言った言葉は必ず親に返ってくる』
ハイム・G・ギノット
草思社
\1470
2006.6

 十代の子どもと親とは、分かりやすいコミュニケーション状態ではないことが多い。
 私もこの本と出会い、「しまった」と思わされたグループの一人だ。おぼろげながら、分かってはいる。こんなふうな言い方をしてはいけない、と。だが、勢いもあって、つい言ってしまう。十代の子どもに受け容れられるはずがない、と分かっていながら。
 いや、多分に、分かってなどいないのだ。だから言ってしまうのだ。この本は、抽象的な話だけで終わることなく、つねに具体的な方法を明らかにしていく。時には架空の会話を集めてまでも、具体的な日常の営みの中に問題を還元していくのである。
 日本語の副題は「思春期の子が素直になる話し方」とある。原文にはなく、タイトルそのものも、"Between Parent and Teenager"となっている。日本語で売るためには、適切な日本語訳であったかもしれない。事実、どうすれば会話が進むか、子どもが満足する対応ができるか、その研究書みたいなものとなっている。
 64頁からの、「トラブルに発展する七つの道」にはどきりとさせられた。この七つのどれもを、自分はやっているではないか。さもよい対応のようにさえ見なされていたものが、トラブルへの道であったのだ。
 守るべきは、「共感」である。これが、言葉で言うほど簡単なことではないことは、親を経験してみれば分かる。親は、共感なんかわざわざしなくても、できているつもりが、どこかにある。自分が育てた過去の十年間余りの残像が重なり、分かっていると思いがちだ。しかし、その前提を外してかからなければ、問題は解決しない。いやそれどころか、分かっていると思っていることそのものが、問題の原因であるというわけだ。
 褒めればよいのだ、と楽観的な親もいる。だが褒め方が難しい。122頁からの、褒め方の実例集は、やはりよく褒めたぞと自負しがちな親にとっては、それが最悪であったのだと思い知らされること必定である。他方、子どもが肯定的な自己のイメージをもつように、賢い親は、し向けることが、できるのである。
 実はこの本は、原著としてはかなり古いものだそうである。著者もすでに30年以上前に亡くなっている。ここに40年近くの時を経て、邦訳初公開となったという。だのに、そんなことを思わせない内容であった。今も同様に役立つ資料となりうるのである。こういう、時間の審判を経たものは、傾聴に値する。




Takapan
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