本

『パウル・クレー作品集 詩と絵画の庭』

ホンとの本

『パウル・クレー作品集 詩と絵画の庭』
黒田和士
東京美術
\3400+
2025.1.

 私のような者が、パウル・クレーについて論ずることはできない。だからこの本の美しさを宣伝しようと思う。全編カラーでまとめられたA4サイズの本は、200頁足らずにしてはずっしりと重い。しっかりした紙で美しくプリントされている。パウル・クレーの作品の写真がていねいに挙げられている。ときに、その一部を拡大したものを横に並べ、詳細に味わいたい人の心をくすぐる。
 1879年にスイスで生まれ、音楽を愛した少年はやがて文学に、そうしてついに絵画のほうに中心を置くようになる。ドイツに学び、北アフリカの旅がその考えをつくり、以後抽象的な絵画へと移りゆくようになる。第一次世界大戦に従軍するが、親友を喪う。やがてナチスが政権をとると、前衛芸術への弾圧が始まり、故郷のスイスへ亡命する。作品は減るが、詩を間近に迎えた頃に、多くの作品を遺す。1940年、ナチスの破綻を見ることなく、亡くなる。
 本書の著者は、「はじめに」で、私たちが知るべき大切なことを述べきっているような気がする。そこからいくらか紹介することとしよう。
 「パウル・クレーほど、日本人に親しまれているヨーロッパの芸術家は多くないだろう。」「1920年代前半、驚くべきことに2本でも、クレーの作品が少しずつ展示され始めているのだ。」「とはいえ、2本においてクレーが十分に紹介し尽くされたかというと、決してそんなことはないだろう。」「この作品集は、おおむねクレーの生涯を追ってはいるが、必ずしも時代順に作品を紹介しているわけではない。」「この作品集では、クレーの多種多様な姿のうち、特に重要と目されてきたいくつかを取り上げる。」
 こうして、全体を6つの章に分け、それぞれ「物語から始まる」「前衛との交流」「破壊と創造」「バウハウスと構成主義」「自然の創造」そして「絵と文字のあいだ」と題して区切る。それぞれ短い解説を加え、各章に読者が最低限必要な心構えを抱いて入ってゆくことができるように配慮してある。ま た、各作品にも、短い説明を加えているものが多い。
 少しだがコラムも設け、もちろん年譜なども収め、これからパウル・クレーについて知ろうとする人もついてゆけるようになっていようかと思う。また、冒頭の5頁には、まとまった文章が載せられており、パウル・クレーについてひととおりの知識を得ることができるだろうと思う。しかし、何よりやはり、作品を見て体験してゆくのがよいと思う。作品を曲がりなりにも眺めてから、再びこの最初のまとまった文章を見ると、ようやくうっすらその言葉の意味が心に映ってくるであろうと思うのだ。  見返しの部分に見えるカバーに、パウル・クレーの言葉が比較的大きく掲げてある。これは、言葉として記憶しておくのに相応しいだろうと思う。
 「芸術は眼に見えるものを再現するのではなく、眼に見えるようにするのだ。」




Takapan
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