『Nyaton ネコの科学 Newton3月号増刊』
ニュートンプレス
\1000+
2025.3.
表紙を飾る猫は、編集スタッフの飼い猫ベンガルであるという。「an・an」にしろ「NyAERA」にしろ、毎年猫特集の雑誌を組むのは、それだけ注目され、また売れるということであるのだろう。季刊の猫雑誌もあり、愛猫家としてはどれかを、あるいはどれでも、購入したがってしまうものかもしれない。
その流れに、「Newtom」も参戦した。但し、2018年には「猫の秘密」という特集を組んだこともあったが、雑誌の中のごく一部に過ぎなかった。それが今回、完全に猫で1冊が組まれている。猫ブームに乗っかるのか、と見られるが、そこはやはり「Newton」である。これは完全に「科学」である。このシリーズに特徴的な、大判の写真が多くを占めるという点は、猫を鑑賞するだけでも楽しみとなるのではあるが、科学的な視点から猫について解説するというのは、他誌ではなかなかできないことである。つまり、半端なく科学的に解明しようとしているのである。
写真の魅力はここでは伝えられないし、それは実際にお手にとって得て戴きたいものである。また、科学的知識についても、本誌のグラフィックな、そして一連の科学者たちによる解説に勝るものはない。そこで、章立てだけをお見せすることにしよう。
「1.ネコの品種と遺伝学」には、毛色の話から、ネコの祖先と人間との関係の歴史などが語られる。コラムには、ネコについての言い伝えやことわざについて、科学的根拠があるのかどうか、が触れられている。
「2.ネコの身体能力と心理学」は、あの見事な着地のことが触れられている。ネコパンチの凄さも驚かされる。嗅覚と視覚の関係は、ネコに触れている人にはよく分かっているだろうが、改めて科学のメスが入る。コラムには、声が分かるか、気持ちは分かるのか、など興味深い内容もある。もちろん、気持ちは完全には分からないのだろうけれども。
「3.ネコの健康と栄養学」は、地域猫の管理をする人にも朗報であろう。不足しがちな栄養素にしても、猫の食事について経験的に知る人は多いだろうが、専門家の指摘については、もしかするとあまり気づいていなかったことが含まれるかもしれない。また、医療についても、地域猫の世話は知らねばならないことが多い。私も見せてもらったことがあるが、カラー写真で患部と診断や処置内容を見せてくれ、丁寧なカルテを作ってくださる。
最後の「4.野生のネコとネコ科動物」には、イエネコやヤマネコなど、動物学的な視点からの紹介がなされるが、希少動物を食べてしまう野生のネコがいることについては、少々ショッキングであった。どちらが悪いのでもない。自然というのは、そういうものである。むしろ、希少動物にしてしまったのは、基本的に人間なのであって、ネコが絶滅へ追い込んだのではない。人間の、自然における位置づけについては、いつも心を痛めているだけに、自分自身が当事者として関わっているこの問題を、痛みを以て考え、実践へ向けて協力していかなければならないことを改めて覚えるのだった。
なお、この最後の章については、伊澤雅子さんが担当している。北九州の、いのちのたび博物館の館長である。私は『ノラネコの研究』という絵本で出会った。絵本なのだが、実に動物の行動について詳しく扱っており、よく描かれている。本書の協力者には、獣医や獣医学者などの名前がたくさん並んでおり、内容的にはきっと信頼がおけるものだと言えるだろう。
ただネコちゃんが好き、という人もよいし、ネコについての知識が欲しい、という人もよい。とくに、可愛い可愛いではなく、ここまで科学の目でまるごと1冊にわたり捉えたものとして、貴重な試みであったと思う。新書でもいま一冊千円を超えるものが当たり前になった時代である。本書の1100円には、十分な価値がある。出版を知ったのは遅かったが、そのときにはもう在庫がネット上になく、ずいぶんな高値がついていた。その後、福岡ではやや遅い書店での入荷を待つ中で、一冊だけ発見し、喜び勇んでレジに持っていった。その後、増刷されているというから、いまごろは入手しやすくなっているのではないか。猫がお嫌いでなければ、お薦めしたい。

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