本

『ムーミン画集 ふたつの家族』

ホンとの本

『ムーミン画集 ふたつの家族』
トーヴェ・ヤンソン
講談社
\2730
2009.3

 たくさんのムーミンの絵。ファンにしてみれば、これは安く感じるほうではないだろうか。トーヴェ・ヤンソンが語った言葉をいくつか引用して、あとはできるだけ沢山の絵や原画を並べておこうという企画。サブタイトルのように添えられているのは、ムーミンの家族と、ヤンソンの家族とを、比較したり、重ねて見たりしているこの本のコンセプトを表している。
 日本では、岸田今日子さんの声がぴったりという印象で人気アニメであった、ムーミン。そのアニメで育った世代が親となり、その子に伝えられて知られているというのもあるし、その親自身が懐かしがってというのもあるのだろう、今、ムーミンのキャラクターグッズがかなり出回っている。そこそこのお値段がする物も数知れない。1990年のリバイバル製作されたアニメの影響でもあるという。
 そもそもムーミンはカバではない、という辺りからしばしば話をしなければならないほど、知られてもいるし、可愛がられてもいるキャラクターである。ヤンソンも、子どもに対する熱い思いを、少しも減じることなく創作に望んでいたらしい。巻末に、国際アンデルセン章受賞のときの講演原稿が置かれているが、そこで子どものための創作ができる作家の心の秘密が明かされているようにも思えた。
 しかし、ムーミンの物語自体は、必ずしも明るいとは言えない。アニメでは風変わりだが優しく包容力のある父親として描かれたムーミンパパも、おそらくかなり哲学的な生き方をしており、わがままと言えばわがままなのであろう。物事の暗い側面も思索しているようである。ほかにもユニークなキャラクターがあるが、深い思索をしたり何かこだわりをもっていたりというものがいくつもある。
 ムーミンは、だからかなり難解な作品なのだとも言われる。戦争に対して批判もできないような時代の中で、ムーミンたちは生まれ、トーヴェ・ヤンソンの怒りの叫びと共に、かの平和そうなムーミン物語が生まれた、というようなことを聞いたことがある。
 私もまたそうなのだが、ムーミンの原作を読んだことがない。だからこの画集を見ていて、読んでみたいと強く思うのであった。




Takapan
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