本

『百年前の日本』モース・コレクション[写真編]

ホンとの本

『百年前の日本』モース・コレクション[写真編]
小西四郎・岡秀行構成
小学館
\3990
2005.2

 もともと1983年に発行されていたが、このたび普及版として世に出された。
 あの、貝塚発見などで有名なエドワード・S・モースのコレクションを、セイラム・ピーボディー博物館から厳選して集めた写真集である。
 実に面白い。そして、妙に懐かしい。
 そこに映る明治の日本人の風景は、大部分が演出写真であり、わざわざそのようなポーズをとって撮影されたもののようである。スナップ写真という感覚は、ない。だが、たんなる文献ではなく、あらゆるものが映り込んでいるだけに、写真というものは、言葉にならない多くのものを伝えてくれることになる。
 寺社や観光地の風景は、どうかすると、古い絵葉書などで見ることがある。だが、何気ない日常であるような、農作業や工場の風景、金物屋の店先や行商、学校の授業風景や子どもたちの遊び、さらには遊郭や町の祭までが画像として届けられると、感慨深いものがある。
 人工着色された写真であるが、多くは原色を表していると思われ、臨場感がある。渡しなども、こういう店先は出合ったことがある、と思えるものがある。その意味では、京都の町中には、古いままの形が残っているように感じられるものがあった。
 忘れかけていた何かを、この画面から思う人もいることだろう。
 誰もが、一度でも、こうした百年単位の昔の写真に触れることは、意味があると思う。




Takapan
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