『まどか26歳、研修医やってます!』
水谷緑
まどか先生協力
KADOKAWA
\1200+
2024.12.
2025年1月から、連続ドラマとして放送されている。その最中に見つけた。
どう呼んだらよいのだろう。コミックエッセイ、としてしまうには、誠実すぎる。確かに笑えるような箇所をつくっているが、内容は至って真面目である。とはいえ、出版社が表紙で「コミックエッセイ」と書いているのだから、それでよいのだろう。
どうやら2015年に旧版が発行されているらしい。今回ドラマ化と関係があるのだろうが、新版として発行されたことになる。
元気な研修医・まどかを軸として、病因における医師の修行を紹介してゆく本である。口から出るセリフよりも、枠内に添えられる解説が場面と背景を教える。まどかの独り言のような形ではあるが、必ずしもそうだとして読まなくてもよいような気がする。読者は、研修医の姿を、ここから垣間見るのである。
必ずしも生真面目ではない。あまりにノリであったり、失敗の実験に使われるようなふうであったりと、このような形で手術される患者は嫌だよな、と思わせるような部分も見られる。だが、真摯に向き合っている部分があるのも本当だ。確かに、そのどちらかだけですべてが成り立つわけではない。根柢に誠実な職業意識があるならば、それはそれでよいのだろう。また、誰もが未経験からスタートする。経験を重ねながら覚えてゆく、というのも真実である。
1か月にふたつのオペという程度の少ない経験であっても、また血管を傷つけて出血が止まらないことがあっても、師匠というか、ベテランがそばでその都度助けるというあり方をしているから、さしあたり深刻な事故にはならない。そうした様子が、よく伝わってくる。いずれ一人でするのだ、ということを教えてゆくためには、こうして遅々とした歩みのようであっても、経験を重ねてゆくしかないのである。
研修医の間は、いろいろな科をまわる。泌尿器科の場面は、男性の性器にもメスを入れる場合がある。そうした現実も描くし、女性のためには、女性の医師が如何に貴重であるかもよく伝わってくる。心臓マッサージが必要な緊急の場面も最初のほうで出てくるし、先輩医師の貴重な教えも随所で響いてくる。それは、医学とは関係のない読者の心にも届くだろう。
医局に属さない、一匹狼のような医師が、実に全体のことをよく見ていて、「チームとして」という考え方をベースにしているところなど、グッとくるものがあった。
冒頭で、看護師に間違われるところから始まったエッセイは、やがて、女性医師独自の問題にも深く関わってくる。女性医師の数は確かに増えている。しかし、年齢を重ねるとそれが減ることにも触れられる。院内は男社会であり、旧態依然としたものが漂うことも描かれている。一般社会の男性からは敬遠されることが多く、結婚相手が限られるために、結婚生活が続くタイプと、結婚はしたものの離婚してしまうタイプと、それから結婚には至らないタイプとが、三等分されるほどであるという情報に、女性の研修医たちが悲鳴を上げる場面もあった。そうして、憧れの男性医師に打ち明けるかどうか、などと迷っているうちに、それができなくなってしまうような話もあって、切なくなった。
これはもちろん一例のドラマではあるが、実際の医師である協力者により、リアリティのある描かれ方がなされているのは、ひとつの真実を表しているはずである。睡眠時間の少なさに驚かされるし、カップ麺をすするばかりの毎日という姿には、医師自身の健康を心配するしかないのだが、医療従事者の激務は、やはり社会全体で考えていかなくてはならない課題だと思わされる。面白かった、と読み終わるだけではいけないと思うのだ。
なお、テレビドラマは、私は見ていなかったが、本書を閉じた後、TVerでダイジェストを見た。もちろん幾つも、ここにあるシーンは活かされているが、本書とは設定や流れも異なるところも多々あるように見えた。確かに、このエッセイでは、流れるようなストーリーというものが記されているわけではないので、ドラマとして制作された中には、脚本や演出の腕の見せどころというものが強く感じられたのであった。また、コミックスはけっこうラフなラインの絵で描かれているため、主人公の芳根京子は、顔立ちが良すぎて、コミックスのイメージとはずいぶん違うように思う。そのため、ドラマは職業もので、ずっとシリアスな路線で流れてゆくように見えた。コミックスの方が、肩に力を入れずに読めるような気がする。
こうしたドラマでは看護師が華になることが多いが、本書では看護師は、ちょっと狡い立ち回りをするような存在がせいぜいであり、影が薄い。でも偶にはそれもよいように思う。医師そのものに男性も女性もないとは思うが、現実の医療の世界では、女性はまだまだ対等な位置にいるようには見えない。もう一度、この点には触れておきたいと思う。

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