『男の部屋の整理術』
小松易
石川ともこイラスト
メディアファクトリー
\1155
2013.3.
私が壊滅的に苦手なことが本になっていた。
部屋の片づけである。
何も、ゴミの山になっているわけではないが、決して見た目が美しいわけでもない。雑然としている。ただし当の本人は、それなりに秩序があると思いこんでおり、通常の活動については不自由がないのだが、いざ何かがない、となると、探しまくることは確かにある。また、当人一人が使う分には差し支えがないのだが、誰かがもしそこで何かをしようとなると、まるっきり分かるまい、という程度の出来である。
そもそも、本が溜まりすぎている。家人には捨てろと迫られるが、しぶしぶいくらか出しているものの、思い切って廃棄することがなかなかできない。もったいない、という思いもあるのだが、それなりに思い出が詰まっているのと、もしかするとまた使うかもしれないじゃないか、と思うのである。特に本となると、何かまた調べるということは私にとりどうしても起こることであって、自分の本は自分にとり貴重な資料であるのだから、それがないとなると、困ること必定である。少なくとも自分では、そのような意識でいる。だから、捨てられないのである。
断捨離という言葉は、何か瞑想の世界から来たらしく、流行った言葉の一つであるが、私の耳には聞こえないような言葉なのであった。
世の中には、私と同様な人もいるらしく、そして、それとは正反対の人もいるらしく、次第に勢力は、その物の少ない人々の考え方が清らかで模範的だという方向に傾いているようだ。散らかる、荷物持ち、それはダサいこととされている。
どだい、テレビドラマを見ていて思う。「あんなきれいに片づいた家が、果たしてあるのだろうか」と。実際、あるのは、ある。だが、少なくとも私の部屋は、テレビドラマの撮影場所としては明らかに相応しくないのだ。
さて、この本の話題にはなかなか触れることが、ここまでできないでいる。
そもそも、部屋を片づけるというテーマの本や雑誌は、今やかなり多い。要するに、「捨てる」に尽きることなのだが、その他、揃えて置くときの見映えの良さと、機能性の問題もそれに加わって、快適な生活術として、注目を浴びている。ただ、その話題はほぼ女性の独擅場であったように見える。家庭の主婦が、どう片づけるか、という発想で述べられ、編集されているのが殆どであったと思われるのだ。
そこで、この本、タイトルはまさに「男」である。つまり、コンセプトは、独り暮らしの男性の部屋の片づけなのである。ここが私にはポイントであった。主婦が片づける部屋という情景と、独り暮らしの男の部屋という情景は、決して同じではない。アイディアもすべてが同じように展開するわけではない。そして、こうした男性は、決して少なくない。結婚していない男性も数多いとなると、ただの学生の部屋の作り方という考え方では収まりきれない問題が起こってくる。
そう、この本にはたとえば、「成人向け書籍・DVD」という項目がある。これをどう整理するか、保管するか、置いておくか、これは、主婦雑誌の埒外の出来事である。「避妊具」というのもある。これも、まず一般女性向けの整理術には載らない。しかも、男性ならば分かるだろうが、これを「どのように」置いておくかは、実のところかなり重大な考察ポイントなのである。その点に手の届いたこの本は、実によく練られたものであると言える。書斎めいたところを実にシンプルに整理するために、三つの物しか置かない云々と、分かりやすい指摘に終始するこの本は、何も複雑なテクニックを教えようとするものではない。そして男にとり、こうしてシンプルな原理が、実のところ一番頼りになるのだ。ここはこのように百均グッズを利用して、などという説明は要らないのである。
そういうわけで、優れた指摘を刺激とすることのできるこの本は、ちょっと体験するにきっと損のない本だと言えるのであった。
しかし、私自身、実行はなかなかできないところが辛い、天国には何も持って行けないんだから、と常々言われ続けている。そろそろ考え方を変えねばならない時期にもなってきた、という自覚がないわけではないのだが……。