本

『LOH症候群』

ホンとの本

『LOH症候群』
堀江重郎
角川新書
\900+
2021.11.

 更年期障害。この言葉は、女性という立場に結びつけられやすい。先入観である。当然、男性にもある。ただ広く知られていない、あるいは意識されていないだけである。本書はそういうところから、男性の更年期障害について紹介するものである。
 順天堂大学の泌尿器外科の教授が、その経験と研究とから警鐘を鳴らす。また、密かに悩んでいる男性のために、意識を向けさせ、治療の道を提言する。
 これはただの、リモートによる苛々だろうか。年齢が加えられてきたために仕方ないことなのだろうか。だが、治療の現場から見れば、それは明確に分類され、診断されうることなのだという。尤も、素人判断は気をつけなければならない。本書を読めば、かなり詳しい情報が得られる。治療法や薬までもなかなかよく紹介されているのだ。だからそこだけは気をつけなければならないであろう。
 日本人成人男性の中でも数百万人いるのではないか、と推測されている。このLOH症候群というものが、「初めに」というところで Loss of Health (不健康)であるとか Loss of Hope (失意・絶望)などと洒落られているので誤解を招くかもしないが、その後本論において Late Onset Hypogonadism のことであると説明される。「加齢に伴ってテストステロンの値が病的に下がるという意味」であり、日本語訳だと「加齢男性性腺機能低下症候群」であるという。
 男性ホルモンの代表であるテストステロンが減ることで、影響が出る。もちろんそれは個人差があるものではあるが、基本的に30代以降の男性なら、誰でも陥る可能性があるのだそうだ。
 この類いの本は世にたくさんあり、ひとつには警鐘を鳴らすという役割があるだろう。そのためには、言葉は悪いが、時折「煽る」タイプで示すものがある。少しばかりセンセーショナルに示さないと、人々が注目しないからである。そのためにはまた、これはこうだ、と決めつけたような言い方を見せることもある。ある程度は仕方がないだろうと思う。本書も、編集サイドからの指示ではないかと思われるが、かなり思い切った断定表現が多い。だから読者は、それを踏まえて読む必要があるだろう。煽られて焦ったり、またそのことがストレスへとつながったりすることはよろしくないだろうし、何よりよくないのは、素人判断をして素人治療へと走る可能性があるということだ。もちろん、薬などについてはその危険性も併せて指摘しているので、ちゃんと読めば軽々しく考えてはならないことは理解できる。賢い読者でありたいと思う。
 その意味では、最後の最後にきて、「幸福感を高めるために」と題した、完全に「気の持ちよう」としか言えないようなところが、実はとても読み甲斐があるところだと見た。その直前に、幸福度調査のYes・Noチェックがあるが、それをする・しないは別として、精神的な満足ということについては、読んで早速役立つものではないかと感じたのだ。
 幸福は、数字で決められるようなものではない。加齢や機能低下はやむを得ないものであるから、どうぞ幸福を感じられるように、賢く読書し、生活したいものである。




Takapan
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