本

『最新「LD(学習障害)」の子育て法』

ホンとの本

『最新「LD(学習障害)」の子育て法』
上野和彦
講談社
\999
2008.5

 シリーズの名は「見易い・すぐわかる 図解 大安心シリーズ」という、なんだか凄いとしか言いようのないものだ。これに、タイトルには実は枕詞のように、だが赤い字でしっかりと、「ササッとわかる」と付け加えられている。こういうのは出版社が決めるものなのだろうが、もうちょっとどうにかならないか、という気がいつもする。
 だが、そのダサイ宣伝文句も、実のところ、的を射ているようなのだ。例の如く見開き2頁で進められていくのもそうだが、この本はその形式についても驚くほどワンパターンである。つまり、実に見易いのは確かなのである。
 何よりも、著者の眼差しが細かな配慮と共にはたらいているのがよく伝わってくる。配慮が行き届いた、という表現が適切かもしれない。大学院から大学助手、助教授から教授そして文部科学省の委員、東京都の委員長、学会の会長などと、研究者としてはこの世のあらゆる名誉を手にしてきたような著者である。小学校の現場で苦しむ児童と向き合って生活してきた、というわけではないのであるが、その親、保護者の心配や不安とはたくさん向き合ってきたという感じが現れている。この本も、そういう本である。
 実際にそうした親から聞いた話や、その対処を図ってきた経験を基にして、分かりやすいLDの子との接し方やその背景が紹介されていくものだというふうに見えた。臨床例はプライバシーの問題もあるのかもしれないので、この本には掲載されていない。だが、だからなおさら、パターン的に問題点が指摘され、それをどのような行動に移して対処していけばよいのか、懇切丁寧に伝えてあるように思う。
 本の結末がなかなかいい。親へのメッセージなのだろう、「寄り添うこと」でさりげなく結ばれていく。あまりにもさらりとしていて、これを読み飛ばしたり、気づかないで読み終わってしまったりすることがないだろうか、と少しばかり心配する。
 薄い本だが内容が豊富で、実際に行動化するときにも役立つ情報が多い。値段も手頃で、これは実際にその問題で悩んでいる方はもちろんだが、子どもと何らかの形で接することのある人は、ぜひ頭に入れておいて戴きたい知識ではないかと感じた。




Takapan
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