本

『Jポップとは何か』

ホンとの本

『Jポップとは何か』
烏賀陽弘道
岩波新書945
\819
2005.4

 エネルギーのある本というものは、読者を捉えて離さないものである。ぐいぐいと引き入れる。なんだ、そうだったのか――謎を解いていく本もまた、同じである。
 ファッション的に語られる「程度」の言葉である「Jポップ」。この言葉について、その生まれや背景などをつぶさに調べていったところ、日本の音楽業界の特質や考え方が、驚くほど鮮明に浮かび上がってくる。
 そもそもその名がどうやってつけられたのか、それははっきりしているそうだ。東京の一FM局が、あるコーナーのために苦し紛れにネーミングしたものだという。そして、この動きによって音楽業界は大きく変わることになる。
 私が以前から疑問に思っていた、エアチェックの滅亡が如何に行われたか、という問いにも、この本はあっさり答えていた。それが、読み始めてわずか5頁目。これで突入できないわけがないだろう。
 なぜこんなに面白いと感じるのか。その理由の一つは、誰もこんなことを真っ向から語ってくれなかったからである。誰もが口にし、誰もが意味なんか当然わかりきっているよ、といった顔をする常識たる言葉に対しては、疑問を投げかけるだけでも勇気のいることである。まして、それを徹底追及し、背景を解き明かすとなると、その道のフロンティアだということで、思わず拍手をしたくなる。
 タイアップがレコード業界に火を点け、しかしまた、それも永遠には続かず、さてこれからどういう方角に向かおうとするのか、著者は明確に語っているとは言い難いが、硬直した業界に反省を促そうとしているように見える。
 いやはや、面白い本であった。なんだ、そういうことか、と様々なことが分かりすぎてしまうほどだった。
 日本国内だけでしか消費されない日本のJポップは、世界に通じることを憧れ続けた日本人の悲しい現実というものなのだろうか。社会的な背景を様々に横に繋いでゆくから、よけい説得力がある。
 これは、日本のヒット曲を理解するための、基準になる本かもしれないと思う。力のこもった本であった。




Takapan
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