本

『きょうも幸せです。』

ホンとの本

『きょうも幸せです。』
イ・チソン
金重明訳
アスペクト
\1365
2006.1

 自己で大やけどを負い、生死の境も彷徨った末、元の姿とは程遠いありさまとなってしまった、若い女性。
 すでに『チソン、愛しているよ。』が広く知られているとのことだが、すみません、私は読んでいない。そこで、この本で初めて事情を知ることになる。
 事故から5年、大学生であった彼女は、大学院生活を送り、留学も果たす。そうした学びの生活に戻るまでの経緯も大変だったが、今なお、大変な姿であることに変わりはない。まことに、写真も痛々しい。
 ともすれば、読むだけで痛い思いがしてくるこうした本には、触れずに過ごすこともあるのだが、どうしても読みたいと思った訳は、イ・チソンがクリスチャンであるという理由だった。本の目次を見れば分かる。
 しかも、彼女が支えられているのが、紛れもなく、信仰なのだ。
 そうか。だから、日本でマスコミなどに大きく取り上げられることがなかったのだ。日本では、家族の愛とか、本人の頑張りとかで立ち上がろうとする健気な患者は受け容れられるが、神を信じて神に栄光を帰すような患者は、殆ど拒絶されるような面がある。病人ばかりではない。最近では、あの「ナルニア国物語」の紹介でも、C.S.ルイスをとことん追究しながら、テレビはついにキリストの「キ」の字にも触れなかった。もちろん、文学を味わうというのは、そんなことに関係なく楽しめばよいのだが、物語の背景を紹介しようという試みであれば、触れないわけにはゆかないだろうと思うのだが……。
 それはともかく、こんなに明るくていいのか、というほどのチソンさんの文章である。もちろん、それはあっけらかんしていているということで終わらないし、私たちも、彼女を褒め称えるということを強要されているわけでもない。ただ、不思議なことだが、彼女の背後に、たしかに神が感じられる。これは、おそらくどなたもお感じになることではないかと思う。
 聖書や教会のいわば専門用語を並べることなく、福音を伝えることを希望しているというチソンさんだが、その意味では、たしかに彼女の存在そのものが、福音であるというふうにも見える。韓国では知らない人はいないという彼女だが、日本でも、キリストと共にいる彼女が取り上げられてもらってもいい、と思った。




Takapan
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