『教養としてのジャズ』
村井康司監修
世界文化社
\1700+
2024.12.
根っからのファンも多いが、ジャズを聴いてみたい、分かるようになってみたい、と潜在的にでも思っている人は、案外多いだろうと思う。興味はあるが、近づきがたい、あるいは、知識のある人を前にしては貝のように口を閉ざしてしまうしかない、ということで尻込みしているタイプである。私もそうだった。そしていまなお、そうである。
ジャズの入門的な本をいくつか垣間見た。ごくごく最低限の知識は身についたかもしれない。特にいま家には「アレクサ」と呼ぶと、指定の曲を演奏してくれるので、こうした本を開いたときに、実に重宝する。この曲なんだ、というふうに、臨場感たっぷりに読むことができる。もしまだ実行したことがなかったら、試して戴きたい。
サブタイトルには、「時代と境界を超える「音楽(ジャズ)」のすべて」と掲げられており、「聴くべき名盤343枚」と、それぞれの項目で代表的なアルバムの紹介がたっぷりとあることが示されている。
さらに拍子に並べられている宣伝文句を拾うと、こうである。「10曲で知るジャズのすべて」「楽器で聴くジャズの歴史」「すべての音楽はジャズとつながる」「語りたくなるジャズ教養」――これらは、四つ並んでいるが、最初の三つが、本書の章とタイトルである。それぞれ、「歴史と音楽」「表現と名演」「越境と共鳴」という説明が中にあり、最後の「語りたくなるジャズ教養」は、本書全般のウリとも言えるように思われる。
こうした本をいくつか垣間見た、と先に触れたが、私の見た限り、これは最も分かりやすいものに挙げられるだろうと思う。話の持ちかけ方がスムーズであり、触れていることに近づきやすいのと同時に、そこから入ろうと思う人には奥が深いところへのよい入口になっている。
確かに、さらさらとカタカナが並び、誰それがどうとか、簡潔にパンパンと並べられているようにも見える。だが、ちょっとした説明の中に、その簡潔さで要点を捉え、無駄なく伝えられていると思うのだ。
最初の10曲というのは、1920年代から10年刻みで一曲だけをピックアップするという、大胆な企画だが、「最初」だからそれで十分だと思う。
次には、一つひとつの楽器を取り上げ、その楽器が活躍するジャズの意味を語る。これが実にいい。終わりのほうでヴォーカルもそのひとつに数えられ、元々歌がなかった中で、どのように人間の声が関わってきたか、丁寧に触れられていた。この辺りのまとめ方は秀逸である。
最後には、歌謡曲もジャズから来ているとか、ポップスやフォークにもどのように関わっているとか、ジャンルごとにまとめられていて、これにはまた目を開かされたように思う。最後には、クラシックとの関係が語られており、世界を分断して説明することに慣れている私たちは、決して音楽はそうではない、ということを覚る。
先に「語りたくなるジャズ教養」は全般のウリだ、と述べたが、正確に言えば、それは章の合間に置かれている「コラム」のためのタイトルである。項目だけ挙げておこう。「文学の中のジャズ」「ジャケットで聴くジャズ」そして「ジャズと映像の共演」という三つのコラムが、様々な書き手によって述べられている。本書は一つひとつの項目が、その方面の専門を知る書き手によって書かれており、だからそれぞれ信用性が増すと共に、専門家であるだけに、難しいこと、詳しいことを、分かりやすく正確に語ることができる、という真実を証しすることになっていると思う。
これからジャズについて知りたいという人には、一見とっつきにくいように見えるかもしれないが、私は最強のアイテムになり得る本ではないか、と見ている。良い本が出たものだ。

た
か
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