本

『知っておきたい日本の神様』

ホンとの本

『知っておきたい日本の神様』
武光誠
角川ソフィア文庫
\476+
2005.11.

 古書店で見つけて百円くらいで購入したものだ。古事記についてはいくらかは知っている。実は小学生のころだったと思うが、古事記の原文といえるものが家にあったので、読んで知っていた。こども向けの物語もあった。そういうわけで、教科書に載る訳でもないような日本神話については、子どもなりに知っているほうだった。
 キリスト者となって、そうした日本の神々とは縁のない生活をするようになったわけだが、しかし日本人がどうしてこうした神々を信仰するのか、それは福音宣教のためにも大きく立ちはだかる課題のようなものとしてずっとそこにあった。それは記紀神話だけでは説明の利かないような神々が多々ある。人々はそれを、キリスト者が神を信仰するようには信じるものでないかもしれない。しかし、ありがたや、と鳥居を潜り、手を合わせることはいくらでもする。中には、何々が痛いからあの神社へ、何々を求めるからこの神社へ、とよく知って行動する人もいる。観光地に行けば間違いなくそういうことであり、京都の地主神社などはそのトップクラスのものであろう。
 本書は、そんなニーズに応えてくれるものであると言える。つまり、日本で神々とされているものが何か、またその神社の御利益とは何か、それが系統的に簡潔に説明してあるのである。
 それは、歴史的に、また文献的になどいろいろな説明の仕方があるが、あまり学術専門的にくどくならないように、記述が本当にシンプルで、読みやすいのである。このような読みやすい書き方で、キリスト教のことをもっと知らせるべきなのだろうということを教わった。正確さを求めるあまり、どうしても最初から詳しく書きたくなるものである。しかし、読者はそもそもざっくりと知りたい、というだけの場合が殆どである。説明はまずざっくりと、この精神でいきたいと強く思うのだった。
 稲荷神社・八幡神社・天神社・諏訪神社。こうした名前を聞くだけで、京都にいたころを思い出したり、福岡でもこの近所にあるぞ、と膝を叩いたりする。熊野神社は京都にもあった。こうした神社の由来や意味を教えてくれるのは、実のところとてもありがたかった。よく知らなかったからである。
 また日本神話の神々についても、もちろん紹介するのが本書の務めである。記紀神話にあったりなかったり、そして皇室に関わる信仰の背景など、次々と紹介してくれる。読み物として読み進めていけば、その都度「へぇ」と思わされるのである。
 どの神社がどう関係しているのか、そうした点を解説してくれるので読むのも楽しくなる。また、天照大神の系統が中心になったような日本神話であるが、それに関係しない地方の神々というものもある。ここで実はおなじみの、日吉・松尾・貴船・上賀茂・下鴨・住吉・愛宕などの神社が並ぶので、実のところ案外こうした天皇家と関係のなかった神社が、私たちにはむしろ近いものなのかということを考えさせられた。
 祀られるのは神話の神々とは限らない。人間も祀られていることを、本書の後半は思い出させてくれる。平将門・柿本人麻呂・徳川家康、そうか、そうだね、と思っていると、明治神宮や靖国神社が出て来て、少し気持ちが複雑になる。
 七福神など海外から来た神々であるという説明はどこかで聞いたこともあったが、金比羅がどうして海運に関わるのか、荒神も京都であったのだがその意味は、など興味深くどの項目も楽しませてもらった。
 動物も神になっていた。狐・蛇・犬、あるある。山岳信仰も確かにある。
 こうして図鑑的に羅列してあるだけの本のようでありながら、終わりの4分の1は、神道とはそもそもどういうものなのか、説明がたっぷりとしてあった。また生活の中で神棚のように祀ることがあるが、その歴史や意味も解説してあった。年中行事との関係は、キリスト者としては大いに関心があるところである。
 最後に、詣でについて。お伊勢参りは有名だが、金比羅詣でというのもあり、富士山に昇って初日の出に手を合わせるなどというのも、この部類に入れて考えることができるのだという。巻末にも資料が豊かに載せられており、なかなか役立ちそうな一冊であった。やはり私には、図鑑としてのほかには関心がないとも言えるが、それでも、こうしたものが何をどう信仰しているのかに気づくことは、キリスト者にとって重要なことなのだろうと考えるものである。




Takapan
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