本

『アイ・ラヴ・ピース』

ホンとの本

『アイ・ラヴ・ピース』
大澤豊・山本洋子
ひくまの出版
\1,400
2003.10

 アフガニスタンで、義足をしなければならなくなった少女パリザットが、日本に来て義足を作ってもらい、立ち上がる。ストーリーの中心はそこにもある。
 これは映画の内容を本にしたものである。文字も大きく、読み仮名が多くつけてある。小学生あるいは視覚障害者への配慮であろう。映画の場面の写真も多く入れられ、実に理解しやすい。多くの人に読んでもらいたいという願いがこめられているかもしれない。
 ストーリーの中心はもう一つ、いづみという女性にもある。忍足亜希子が演じている。映画「アイ・ラヴ・ユー」で、日本初の、聾者ヒロインとしてデビューした女優である。彼女が演ずるということは、このいづみもまた、聾者だということである。義肢装具士の資格をもつ一人として日本で仕事をしていたいづみは、アフガニスタンでの援助のために行かないかと誘われる。写真展で、アフガニスタンの子どもたちの状況を見て、いづみは決心する。そこで、パリザットという少女と会う。危うく地雷を踏みそうになったいづみを助けてくれたのだ。銃声も警告も聞こえないいづみは、それほどに危険なところにいたのである。
 任務を終えて日本に無事戻ったいづみは、義肢製作に打ちこむが、ある日面会だと呼び出される。行くと、パリザットがいた。アフガニスタンの現状のアピールと義肢製作のために、パリザットが日本へ行くことになったのだ。再会した喜びも束の間、難しい義肢の製作にいづみは苦労する。そして……。
 期待を裏切らず、人々が安心する方向へ、物語は展開する。脇役の子どもたちも生き生きと輝いており、その様子は読むだけでも十分伝わってくる。
 生まれたときから戦乱の国しか知らないパリザットは、平和がどういうものか、知らない。それでも、地雷の恐怖から解放されて自由に歩けるようになるというのがたとえば平和であるならば、私は平和を愛する。つまり、I LOVE PEACE.
 この言葉が、映画の主題となっている。子どもにも安心して見せることができる内容であり、またそれだけの説得力もある。戦争をしたがる軍人の書く本とは、ずいぶん違う。どんなにこのような小さな子どもの声が弱く、幼稚であろうとも、そこに真実を見いだせない魂は不幸である。
 日本の子どもたちが、パリザットを囲むシーンがある。遊び仲間に入れようとするのだが、そのとき男の子が、けん玉をして見せ、けん玉を通して友だちになっていくのであった。こんなところにもけん玉が使われている、それほどにけん玉の力は大きいのだ、という驚きに、感動した。




Takapan
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