『あたしは本をよまない』
コウタリリン作・ちばみなこ絵
BL出版
\1400+
2023.12.
第39回日産童話と絵本のグランプリの童話部門で大賞に選ばれた作品だという。
関西の財団が募集している。舞台は関西だ。主人公の「あたし」は、関西の言葉を使う。表紙の女の子がそうである。男の子二人の間に、しかもやや前方に立ち、本を頭に載せている。両端の男の子は、それぞれ本を開いて読んでいる。
ちょっとした、挑発的な表紙である。本を読まないということを知らせようとする「本」なのだ。しかも男の子たちの手にする本は、ひとりが「哲学」、もうひとりが「地図記号」。これら三人が登場する物語である。
学校図書館でかりた本の感想文の発表が、ここ三年二組の五時間目らしい。その1ページ目で、「あたしは本を読むのがすきじゃない」という言葉が現れる。だから文字の少ない本を、そのために選んでいる。お母さんは、その本を一年生みたいだ、とつまらなさそうな顔をする。でも、読みたくないのは仕方がない。
木田くんが、感想文を読み始めた。木田くんは、転校生。この子は、実は最初の2行目から登場する。「・(てん)」みたいにすわっている、と評している。ひとりで静かにしているからだ。だったら自分もまた、賑やかなこの教室の「・」なのだ、と認識している。
哲学の本を読んでいたのは、木田くんなのだった。
さて、こうして物語を明らかにしてしまうのは、礼を失する。ぼんやりと、辿ってみよう。「あたし」は、木田くんと話をする。そして、「哲学」の本を自分も借りる。木田くんみたいに、褒められたいのだ。
他方、草野くんという男の子がいる。クラスで「うるさい」子だ。でも、木田くんは、草野くんの良さを知っていた。「あたし」も、それには共感する。
本の話をするようになった二人の間に、サッカー好きな草野くんも加わるようになる。「地図記号」の本を表紙で開いていた子だ。そして、感想文で賞をもらったのだという。草野くんは、「あたし(=山本)」にも、本を読めと勧める。でも、本は「読まへん」と言う。読まないが――。
バラバラだった「・」の三人が、集まることとなった。勘のいい人は、これが「地図記号」につながることに気づくだろう。「あたし」は、本は読まないが、明るい光が見えてくる。
よくできた絵本である。絵本とは言いながら、「図書館」も「感想文」も、ふりがなすらついていない。「理由」にもついていない。立派な児童文学である。本文では「読まない」と表記されているが、タイトルは「読まない」とである。多少ツッコミを入れたくなることも、ないわけではない。だが、最後の場面の爽やかさ、そして明るさ、また意外な落着きどころに、読後の心の中に、すうっと風が吹いてくる。
いい話だ。
そして、元気をもらった。

た
か
ぱ
ん
ワ
イ
ド