本

『Google Earthでみる地球の歴史』

ホンとの本

『Google Earthでみる地球の歴史』
後藤和久
岩波書店
\1575
2008.10

 最初この本を見たとき、「Google Earthの面白いところをちょくちょく本にしただけの、手抜きの本じゃないか」と思った。ずいぶん薄くて小さな本のくせに、カラー写真なんかにするから、こんなに高くなるのだろうか、とも思った。
 しかし、読むとそれは間違いであることが分かった。ずいぶんと、失礼な感情を最初抱いてしまったものである。
 もちろん、これはGoogleの許可のもとに出版されていることになるのだが、Googleにとってもよい宣伝となったことは間違いない。地球の航空写真をインターネット画面に呼び出すことができる、しかも世界各地でも、少しばかり有名なところならほんの数メートル上空というような接近ができ、そこからの景色を自由に選択できる、そういう無料サービスとして、Google Earthがある。
 しかし、興味本位やのぞき見趣味でこの本は編集されたのではなかった。
 こんな眺めがあるのか、と、目からウロコの連続であった。これだけの面白い風景を知っているというだけでも大したことであるのに、それを惜しげもなく教えてくれるのだ。
 いや、それだけではまだ面白いなで終わるところだ。そうではない。地球上の様々な地形から表情を読みとり、それに対する人間の営みを、歴史として、あるいは未来への展望として、見つめて考えていくのである。
 考えてみれば、こうした地形の紹介は、現地へ行き、そこで上空にヘリコプターでも飛ばして撮影、というのがこれまでの常識的な考え方であったのではないかと思う。それが、なんと居間にいながらにして、それができる技術がここにあるのである。もちろん、現地へ足を運ばなければ分からないことは山ほどある。しかし、まるで教科書の写真で見るというふうに、知っておくべき資料として対面することができるとすれば、これはなんと手軽で役立つ情報なのだろうと驚いてしまう。
 その地に住む人の思いにも関心はあるが、著者は地球の歴史としてまさにそれらを解読しようとする。もちろん、時には政治的な考え方に釘を刺しているのかなと思えないものもあるが、主にこれはやはり地球そのものを愛している人の叙述である。
 ビジュアルに迫るものであるから、説得力もあるし、実際、感動の中で考え込んでしまった。これはきっと画期的で、すばらしい試みの本だと言えるだろう。




Takapan
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