『ユリイカ・92年目の谷川俊太郎 令和6年3月臨時増刊号』
青土社
\2600+
2024.2.
2024年11月、谷川俊太郎は二十億光年の彼方に旅立った。それに先立ち、『ユリイカ[詩と批評]』が460頁にもなる分厚い特集号を発行していた。私はこれを、NHKのEテレ「100分de名著」が2025年5月に「谷川俊太郎詩集」を放送することになってから、入手した。
様々な人が論評している。多角的な視点により、谷川俊太郎の世界を知りたいと思ったのだ。
谷川俊太郎亡き後、当然その特集号が各方面から出版された。だが、印象的な写真と、有名な詩、またよく知られたエピソードを並べるというような、見てくれのよい編集となることが多いのではないかと危惧する。その点、本誌は、総勢50人ほどの目から見た谷川俊太郎が、たっぷりと描かれている。それも、ある程度テーマに沿って集められているため、順に読んでゆけば、落ち着いて読み進むことができる。
直接、谷川俊太郎と触れあった人の声もいい。その作品に親しんだ人の思い入れが綴られているのもいい。そしてここに私がいるが、いったい私に何が言えるのだろう。ここに集められた人々の掲げたタイトルを、並べるくらいが精一杯ではないだろうか。
「往復詩」は、伊藤比呂美と谷川俊太郎との対談であり、最初に掲げられている。途中には、その伊藤比呂美と尾崎真理子、高橋源一郎にマーサ・ナカムラ、そして四元康祐による「今更、谷川俊太郎」という題での、「谷川作品をめぐるシンポジウム」があった。
個人の執筆によるものとしては、「世界の谷川俊太郎・谷川俊太郎の世界」、「谷川俊太郎さんのあとに」、「迎えに来ていただけますか……、谷川さん。」から始まる。
「『二十億光年の孤独』――孤独の旅の軌跡」、「詩人の中のアトム」、「勉強すると、谷川俊太郎の言葉が変身する」、そして「青空を見つめて死なない――谷川俊太郎について」と続く。以下、題だけを挙げていこう。
「黙想する谷川さん」「んぱぱ んぽぽ うん うん――「いまここ」をめぐる旅」、「この気もちはなんだろう」
「歌う谷川俊太郎、そのプロテスト」、「校歌の宇宙」、「扱いやすさの罠の前で」、そして「子どもの詩人・谷川俊太郎」
「「詩」を書くよりも」、「谷川俊太郎に共振する――シンポジウム「今更、谷川俊太郎」学生パフォーマンス解題」
「快楽主義者の詩学」、「谷川俊太郎だけが詩人なのであって、他に詩人なんていないのかもしれない」、「谷川俊太郎と日本語と私」
「狂暴な無垢――谷川俊太郎の詩を読む」、「谷川俊太郎とはなにか」、「谷川俊太郎の余白に」、「詩における時間性をめぐって――わたしの谷川俊太郎論」
「小説による「朝のリレー」」、これは創作物語である。もうひとつ、後で「ゲゲゲの俊太郎――あるいは闇の谷川俊太郎の錬成」という創作もあった。
「谷川俊太郎の日本語」、「グラドゥス・アド・パルナッスム――谷川俊太郎の詩のかたち」、「リズムと調べ、あるいは音律」、「谷川俊太郎の詩をどうやって読めばいいか」
「ボート」「谷川俊太郎さんと出会い直す」、「「谷川俊太郎 絵本★百貨展」に「百貨店」と「百貨典」」
「しずかでにぎやかな絵本」、「メディア装置と谷川俊太郎」、「再論・谷川俊太郎とテレビドラマ」、「詩に詩を乗せる――『ピーナッツ』と谷川俊太郎」、「宇宙は笑うか――表情制作論としてのキャラクター、絵文字、詩」
「谷川俊太郎の愛国詩――ロスト・ジェネレーションの感動」、「哲学・文学・ヒューマニズム――谷川徹三についてのエッセイ」、「戦後文学における「励まし」としての谷川俊太郎――大江健三郎を参照項に」、「擦れ違う世界認識――谷川俊太郎と寺山修司」、「とめどない実験」
「定義とその周縁を解く」、「ラジオアイ ポエムアイ カメラアイ」、「今日も書いている人」
「宇宙と地球と私、そして――谷川俊太郎の静かな絶望について」、「言葉になっていない言葉へ――意味を壊し生み出す」、「認識絵本の薔薇十字ポイエーシス――谷川俊太郎讃」、「抽象の亀裂に現れるリアル」
最後には、谷川俊太郎の本を一つひとつ、短いコメントながらも紹介していくものが置かれていた。「<谷川本>をめぐる」と題した19頁が尊い。
執筆者には「詩人」の肩書きをもつ人が少なくなかったが、その肩書きは、文章末尾に括弧付けされて紹介される。だが、文章を読んでいくときに、これは詩人だ、と感じることが度々あった。やはり何か違う。見ている世界が違うのか、だか端的に言って、言葉が詩の言葉だという方が的確であろうかと思う。散文詩として論じてあるようにも見えるし、そもそもが、選び抜いた言葉で、その言葉でなければ伝えられないものを伝えている、と表現してもよいのかもしれない。
これだけ分厚いせいもあるが、少しずつ40日近くかけて読み通した。人にもよるだろうが、こうしてじっくり噛みしめながら毎日読み進めるのがいいような気がする。詩だもの。読み急ぐ必要は、きっとないのだから。

た
か
ぱ
ん
ワ
イ
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