本

『素晴らしい親 魅力的な教師』

ホンとの本

『素晴らしい親 魅力的な教師』
アウグスト・クリ
古屋美登里訳
ポプラ社
\1260
2006.1

 ブラジルの精神学者。そうそう私たちのもとに現れる肩書きではない。
 おまけに、語られる言葉は、悉く理想ばかりだ。タイトルは何の飾りもない。内容そのものである。親や教師に、そのような存在となってもらいたいと語りかける文章が終始続いている。
 でも、何だろう。この、勇気づけられる思いといったら。
 豊かな臨床例を混ぜつつ、親や教師として子どものためにできる姿勢が、ある意味で至って抽象的に「教え」として並べられているだけの構成なのだが、これが心に染みいる。
 冒頭は、「プレゼントではなく、自分の世界を与える」となっている。素晴らしい親のする7つの教え第一である。以下、箇条的に、魅力的な教師の7つの教え、教育者の7つの大罪という反面教師を経て、人間の記憶の5つの役割、そして理想の学校と展開する。
 最後は「巨大な塔」という寓話で締められている。
 こんな理想ばかり並べて何になる、と言って、自分を正当化するような人は、読むだけ無駄であろう。この本には、自分を正当化することは、親や教師としては失格であるような方向づけがなされているからである。
 いや、それは人間にとって、まさにそうなのではないだろうか。
 もっと私にとってこの本が魅力的に見えた理由は、イエス・キリストである。著者は、何度もイエスを実例に持ち出す。カトリック国ブラジルであることも関係しているかもしれないが、聖書の例は、読者に分かりやすいのである。それによると、イエスは実に優れた教育者であったのだ、というのだ。教育の理想をまさに生きたというのが、イエスの姿なのだそうだ。これは、もっと中心に据えて取り上げてよい視座であろう。
 だからこそ、自分を高くすることは、教育とは正反対のものとなっていく。すべてが納得できる地平に流れていく。
 だがまた、宗教に関係なく、教育を考える人に力を与えてくれる本であることは、間違いない。私たちが希望をもつことをよしと思うならば。




Takapan
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