本

『Christmas』

ホンとの本

『Christmas』
光村推古書院編集部編
\1780+
2015.11.

 言葉はいらない。ここにあるのは、ただ写真ばかりである。かろうじて、目次と各頁に、それがどの街の風景であるかが告げられている。
 世界中の街角から、クリスマスの風景が切り取られて、集められている。15cm×15cm、本としては小さなサイズの本だ。だが、そのインパクトは強い。
 縁までが写真である。クリスマスを、世界の人々がどのように受けとめているか、生活の中に位置づけているか、そんなことを感じさせる。言葉がない分だけ、この写真が世界中にいま生きるどの人とも、つながることができるものであろうか、という気持ちにさえなる。ただ、それは現実に難しい。違う宗教の人は、この風景を憎むかもしれない。この写真集は必ずしも普遍的ではない。だが、神は普遍である。平和の祈りは通じて欲しいと願う。
 やはり、ツリーが多く集められている。シンボルとしてはこれほど絵になるものはない。街の中に大きくそびえるツリー。そしてそれは、多くの場合、電飾である。つまり、夜景である。夜景が似合うのは、キリストの誕生が夜と思しき故であるが、電気が使われるようになってからは、自由に輝かせることができるようになった。それまでは、ろうそくであろうか。否、そもそもツリーの歴史自体、浅いものであるし、聖書的な根拠などない。むしろ異教で扱われていたものを採用したようなふしがあり、その意味でももっと退けて然るべきものなのかもしれない。だが、緑が促す永遠への思い、飾るということの中に見る、人間の献げる気持ちなど、人間の心を掴んだ故に、クリスマスをツリーと共に迎えるということはポピュラーとなった。v  他方、オーナメントのようなものや、街の商店街、またその棚のアップなど、写真として単調な流れにならないように気を配りながら、写真が並べられていく。そのあたりからしても、センスのある本である。
 言葉はいらない。この写真で、優しい心になろう。そんなふうなメッセージを、この本を贈ることにより、伝えられるかもしれない。
 ところがまた、途中に、夏の風景が入る。真夏の空の下でのツリーである。そうなのだ、南半球では、12月は夏にあたる。サンタクロースがサーフィンの乗ってやってくる、などとも冗談めいて言われるが、感覚が違うことは、考えてみれば当然である。それでもまた、12月に祝うわけだし、そういうスタイルも想定してクリスマスとしていかなければならないという、当たり前のことに、今さらながら気づかされるのであった。




Takapan
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