本

『C.S.ルイス物語』

ホンとの本

『C.S.ルイス物語』
エレーヌ・マリー・ストーン
澤田澄江訳
原書房
\1680
2005.11

 2006年、ナルニア国物語の第一章がディズニーにより豪華な映画とされ、日本でも上映されてヒットした。子ども向けの映画というだけで終わっている感じもあるが、そこにはキリスト教の重要な意味が裏打ちされていた。もちろん、そんなこととは関係なく楽しむこともできるわけだが、イギリスファンタジーとして定番となったこの物語は、子どもたちの想像力と冒険心を養うだけのものは十分に備えていたわけで、だからこそ、半世紀を経てなお受け継がれているのである。
 ルイスは、そのナルニア国物語の作者である。彼はキリスト教の護教論者としても有名で、優れた啓蒙書を多く著している。ラジオ講演からまとめられた、キリスト教の中心を端的に示した本は、巧みな比喩で心によく伝わる内容となっている。
 しかし、そのルイスは、信仰者として、順風満帆な人生を歩んだものではなかった。むしろ、信仰を捨てた青年時代があり、その後に、回心を遂げたのであった。また、晩年に結婚したが結婚生活は3年間で終わったということは聞いていたが、その後にもずいぶん精神的格闘があったことがこの本に記されている。いや、その結婚に至る経緯について、実に詳しく調べられていると驚いた。
 この本そのものは、子ども向けに書かれたものと思われる。中学生なら万全であるが、小学生でも中学年より上ならば読めるであろう。装丁としても、1頁あたりの字数を落として仕上げられており、読みやすさも十分である。しかし、それだから手を抜いてあるわけでもないし、むしろ平易な言葉で大切なものがきらめくようにちりばめてある。そこから、信仰の豊かさのようなものが、よく伝わってくる。
 こういう基本的な伝記の姿勢というものは、改めて注目されて然るべきではないか、と思えた。




Takapan
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