本

『ブルー・ストーン』

ホンとの本

『ブルー・ストーン』
ジミー(幾米)作絵
岸田登美子訳
小学館
\1680
2006.4

 大人のための絵本。それにしては、ずいぶんな頁を費やしている。たくさんの絵が準備されてようやく一冊の物語になった。
 心の奥底にあるものが、くすぐり出されていくようだ。
 物語は、魅力的な語りから始まる。「一万年が過ぎ、千年が過ぎ、百年が過ぎ、十年が過ぎ、そして一年が過ぎました……」と、森の風景にのせて言葉が始まる。
 青く光る石は、森の奥深くで、この世の終わりまでこうしているだろう、と思っていた。だが、森の火事で平和が乱される。それも長くかかって治まったとき、青い石は、失われた森も元に戻ることだろうと考えた。
 そこへ思いも寄らないことが起こる。人間が、石の半分を持ち去っていったのだ。
 持ち去られた、青い石の半分は、森に帰りたいという強い思いのために、自らを砕く。いや、崩壊していくと言うべきか。
 これを繰り返すと、だんだん小さくなっていく。
 意味を解読することほど、つまらないことはない。何かが読者の心にとまるだろう。自分の中にある何かが、いやもっと言えば、自分自身が、この青い石に重ねられていくことだろう。強い思いのために身を削って小さくなっていくものは、私にとって何なのか。私の心か。私の夢か。私の時間か。
 物語は、冒頭の言葉と重なりつつ、閉じられていく。
 あなたは、どんな自分と、この本を通じて出会うだろうか。




Takapan
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