本

『聖書の教える 教会について』

ホンとの本

『聖書の教える 教会について』
舟喜順一
日本日曜学校助成協会
\1260
1987.6

 果たして今この本が販売されているのか、価格はどうなのか、そんなことは分からず、ただ教会の図書の一冊を読んだということで、ここに取り上げている。
 素朴なスタイルなのだが、良い本であった。
 一つのイラストもない。全部文字だ。先に、「聖書の教える救いについて」というシリーズで綴り始めた、その第三弾がこれである。救いという扱いに限定せず、これを教会というテーマで、26回に分けた解説でやり通した。見事な技術である。
 それぞれが、聖書に根拠を置いている。しかも、ギリシア語の用いられ方を正当に指摘し、聖書の中で教会や教会を指すと思われる語を次々と取り上げていく。そこから、実際的な私たちの教会生活に適用までしていくというのだから、基盤もしっかりしているし、実践的でもある。
 単に、教会はギリシア語でエクレシアと言うのですよ、などというのとはレベルが違う。それが集まりであること、それが新約聖書のどこから初めて使われているか、といった辺りから始まり、やがて当時基本的に語として使われていなかった、クリスチャンを表す言葉が、聖書の中で何という語でどのように使われているかを細かに挙げていく。最後にはそれが神の宮として、また祭司として、そしてキリストのからだとして、建て上げられていくように向けられていく。最終的にはそれは「交わり」という言葉で結ばれていくが、これが最初のエクレシアに戻る構造になっているのは、著者の狙いだったのではないかと思われる。
 これは、どこか抽象的な議論であるかもしれない。実際的に、教会の問題を抱えている信徒や牧師が、すぐに解決を求めるために役立つノウハウがそこにあるわけではない。悩む問題に対する答えがあるのではない。だが、聖書から呼びかける神の真意に気づかされるということはあるだろう。祈りがみこころにかなうものに変わっていく要因にはなるであろう。そして本来、それこそが根本的なものであるということを、教えてくれることだろう。
 急がば回れ。むしろ、岩なるキリストに戻れ。ここから私たちは祈り始めよう。教会が面している問題そのものをこの本は解決してはくれないが、そのために自分がどう立ち上がればよいのか、何を求めて祈ればよいのか、そんな大切なことを、必ず教えてくれる本だと言えるだろう。




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