『アクティブラーニングがよくわかる本』
小林昭文
講談社
\1300+
2016.7.
新しい学習の形態として、アクティブラーニングが導入されることが決定している。事実本書の発汗時現在でも、その試供期間のようにしていろいろ実践され始めている。
アクティブラーニングとは、カタカナで分かりにくいかもしれないが、要するに生徒が積極的に活動をすることにより成立する授業ということである。従来の、静かに座って教示を聴く座学という伝統を一度捨て、教師の説明は最小限とし、できるだけ生徒たちに考えさせ、話しあわせ、意見を発言させるという時間を多くとる。いわば教師は、説明を少なくすればするほどよい、というほどの観点が求められている。
当然、それで従来の内容が教えられるとは思えない。現場の教師たちから不安の声が発せられる。教師というものは、とかく喋りたがるものというスタイルがこれまで出来上がっているので、黙っていることが不安なのもあるが、実際喋りまくってやってカリキュラムを終える、へたをするとそれでも終わらないという状況の中で、生徒の自由学習に任せるようなありかたで、カリキュラムはどうなってしまうのか、そこの心配が多かったことだろう。また、そうなると、これまで以上に、授業計画を練らないと、わいわいとやっただけで終わることの繰り返しにするわけにはゆかない。そのうえ、教師の予想しないことが起こる可能性が従来以上に増えてくる。どう進むか分からない舟に身を委ねるような思いがすることだろう。
欧米の教育スタイルは、従来からこれに近いイメージがあった。だがそれも意識的に近年変えられて用いられているが、日本もそれから何十年か遅れながらも、その波に乗ろうとするかのようである。
このアクティブラーニング、ともかく授業前の準備が命である。端的に言うと、考えさせたいことをまとめたプリントを作成するのである。そのプリント自体が説明を完成しなくてよい。だが、それに沿って進めばうまく目的地に行けるような道案内ができていなければならない。また、まとめの問題で確認するという作業も伴う。
だがともかく、まだ試行錯誤中である。その不安に応えるための本が求められており、この数年、アクティブラーニングについての本が花盛りである。ただ、現実にそれを実践してきたという人でなければアドバイスすらできないものだし、その人が著書を出せるかどうかという点になっても、さらに人間が限られてくる。その点、この小林先生は、注目度ナンバーワンとも言えるほどの人である。これまでも、何冊も世に出して教師たちがこぞって買い求める様子を見てきた。
しかし、本を出すほうもまた試行錯誤である。どう説明すれば分かりやすいのか、現場の教師の不安に応えることができるのか、最初はたどたどしかったような印象がある。しかし数冊を出し、また現場からの相談を受けるなどの経験値を踏まえて、そろそろ良い物が出てきそうな気がしていた。
その点、この「図解」は、説明する文章の量こそ従来のものよりも少ないが、イラストが多く、またコンパクトにプレゼンテーション並みにまとめられて、しかも分かりやすくなっている。知っておきたい項目が一つひとつ目に入りやすく、理解しやすい。私は非常に感心している。私も類書をそれほど多く見たわけではなく、数冊適度ではあるのだが、本書は、これまで私が見たどんなアクティブラーニングについての本よりも、分かりやすい。分かりやすいとは、理解しやすいほかに、見てぱっと誤解なく頭に入っていくということでもある。短時間でマスターできるのではないかと思う。
もちろん、それは私が何冊かでも読んできたからでもあるだろうし、曲がりなりにも自分で実践してきたせいでもあるだろうとは思うのだが、それにしても、この本の説明の仕方は分かりやすい。
そこで私は考えた。まるで、この本自体が、アクティブラーニングであるのではないか、と。ことさらに詳しく説明しないようでも、コンパクトにぽんぽんと示していくことで、読者が自ら学び、理解していく。この本が、アクティブラーニングのプリントのようなものであるような気がしてならない。そこで、内容もさることながら、本書のスピリットを以て、アクティブラーニングをイメージするというのが、私は最も役立つ収穫だったのではないか、と密かに考えている。