本

『ななつのこものがたり』

ホンとの本

『ななつのこものがたり』
加納朋子文
菊池健絵
東京創元社
\1785
2005.9

 子ども向けの本は、本来別のまとまりの中で、つまり子ども向けの本ということで、紹介していかなければならない。
 そして、子どものための本というものは、下手な書評も感想も、はね返すようなパワーをもっている。その本自体が語っているのだから、外野は語るな、というわけである。だから、あまり多くは語るまい。
 この本は、小さな7つの物語からできている。それらは、お母さんが、はやて君という男の子に向けて語られたお話であり、一続きの構成をもっていて、しかもお話としてはばらばら、となっている。
 比較するならば、千夜一夜物語みたいなものだろうか。
 親が子に伝えたいこと、話して聞かさなければならないことを、お話という舞台を通じて、効果的に聞かせているように見えてならない。
 ミステリー著者が、その駒子シリーズのキャラクターを使って語らせるという、入れ子構造になったような、不思議な世界。
 とびきり面白い話であるだろうか。とびきり奇抜な話であるだろうか。必ずしもそうでないように見えるが、全体として、どう表現して良いか分からないような、不思議な魅力が伝わってくる。まともに見ると、表題にもなったお話が、心に突き刺さる。しかし、どこにでもありそうな風景を描いたような他のどのお話も、心のどこかをくすぐるものをもっている。青い絵の具をこれから見たとき、思わずにやりとしてしまいそうな気もする。
 子どもの世界というのは、案外そのようなものかもしれない。派手でなく、奇抜でもなく、どこにでもありそうで、それでいて、どこにでもない、そんな世界なのではないか。




Takapan
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