本

『クリスマスの3つの目的』

ホンとの本

『クリスマスの3つの目的』
リック・ウォレン
ホーバード・豊子訳
いのちのことば社
\1000+
2016.10.

 この本の出版から36年前、リック・ウォレン牧師がサドルバック教会を設立したとき、こんなに大きな教会になると人々は思わなかったかもしれない。だが多くの人の心を掴んだことは間違いなく、また、社会との関わりを重視しつつ、弱い立場の人々を招き助ける働きから見ると、教会が成長する理由という尤もな理由はあったと言わざるをえない。
 著者は、明確なビジョンをもち、自分の言いたいことをいくつか項目立てて告げる人のように見受けられるが、今回、「クリスマス」に絞った語りかけを3つの点にまとめつつ紹介する本が、日本語訳としてこの秋に出版されたのである。
 しかし、いわゆるクリスマス・ストーリーを期待する方からすれば、肩透かしを食う。これは、クリスマス・ストーリーの解説ではない。それらはすでに読者は知っている前提である。それよりも、クリスマスの意義、しかも、困惑し辛い思いをしている読者の心の中にイエスが訪れて生まれ、明るい希望を見出さてくれる、そんな場面が、読後に実現することを想定しているのではないかと思われる。
 恐らくこの本は、アメリカ合衆国において、キリストから離れている人々、クリスマスの意味を知らずにいる人々に対して投げかけた言葉から成る本ではないかと思う。これを聞いて、よし、日本語訳を友だちにプレゼントして伝道を、と思い立つ人も現れるかもしれない。それもよいかと思うが、内容的に、かなりキリスト教文化を前提としている、あるいは聖書について生活感を伴うような理解がすでに何らかの形でできている、そういう背景がなければ理解しづらいものであると思われる。
 そこで、これはむしろ、日本で教会に出席している信徒が、せめて聖書について一定の知識や経験がある人が、読んで伝わるものが多いのではないか、という気がした。特に、終わりに近くなったところで、「和解」と「解決」の違いが語られている。その明確な適用により、私は個人的にひじょうにクリアな視点を与えてもらった思いがしたのであった。
 薄い本で、文字もゆったりとしているため、価格的計算をするとやや高いように思われるかもしれないが、読みやすさは抜群である。読むこと自体に苦労はいらない。しかし、うっかりすると読み過ごしてしまうから、どこかでひっかかり、立ち止まるような読み方が望ましいとは思う。また、すべてが文字であるというのは、ほんの装丁上はコストが抑えられてよいのだろうが、やはりせめていくらかでもイラストか図版があれば、もっと読みやすかっただろう、とは思うけれども、本を読むのがお好きな方なら、問題はないだろう。ただ、先に挙げたように、これは教会員の方々が、クリスマスを年中行事としてでなく、個人的にフレッシュな気持ちで迎えるために たとえば教会の一定のグループで共有しつつ、学ぶような価値のあるものではないか、というふうに私は受け取った。
 ひとに贈るのも悪くないとは思う。しかし、深く味わうと、有意義な考察や黙想を与えられることも可能である。深い泉に通じる道がここにあると思うからである。学術的な述べ方に抵抗のある方には、最適だとも言えるであろう。リック・ウォレンはしばしば、リビング・バイブルから引用するが、誰にもすんなり受け容れやすい表現で語りたいからであろう。




Takapan
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