『3本足の保護猫ふくは、運送会社の広報部長』
石黒謙吾写真・文
山と渓谷社
\1600+
2025.12.
知らなかったが、インスタグラムで人気があるのだそうだ。会社で飼われている保護猫がいて、その勤務の様子を、写真に挙げている。
勤務。どうやら肩書きがあるらしく、「広報部長」であるらしい。労働規約があるのか、給与評定がどうなっているのか、それは知らない。猫はそうした役職を担うことが時々あって、「駅長○○」というような言葉が聞こえてくることがある。旅館のマスコット、というのもいたと思う。
こちらの会社は、運送会社である。
本書には、この「ふく」の日常が、インスタのままに写真掲載されているところも多く、また、事の経緯を、ライターが綴っている。申し訳程度の文章ではない。『盲導犬クイールの一生』の著者だと言えば、「おお」という声が返ってくるのではないか。動物関係の著書が多いというが、だからこそまた、NHKの「ネコメンタリー 猫も、杓子も。」に出演したことがあると言われても、「おお」と言いたくなるのではないか。少なくとも私がそうだった。
さて、この「ふく」はだが、きれいなハチワレの雌の猫である。どういう経緯か知らないが、半死半生の状態で拾われて、命を救われた。助けたのが、この運送会社の人であった。右の前脚が切断されていた。人為的な方法であるかもしれないが、とにかく救うのが先決である。猫の方も恩義を感じてか、この人にとてもなつき、この人を取り囲む会社の人々にもなじんできた。
外国で、オフィスに猫がいて、キーボードの上に寝るなど、殆ど邪魔をしているかのようにしか見えない風景が、時々流れてくる。日本でもあるらしい。確かにそのNHKの「ネコメンタリー」を見ていると、ありがちだと分かる。「ふく」もそうらしいが、まあそこはうまいこと互いの立場から歩み寄って解決しているのだろう。副題の「ニャンと写真のあたたかなオフィス」という触れ込み通りである。
この「ふく」は、2017年から会社にいる。今や「会社員ふく」である。8年目にして、その動画を公開したら、評判になってきた。フォロワーは、一旦増え始めると、雪だるま式に増えてゆく。あるときから、急激に支持者が増える。
ただ、この会社のある場所が問題である。能登半島。金沢から福井に向かう途中にある。社員の中には厳しい被災者もいる。「日章」というこの運送会社は、廃棄物の運送など、復興のためにも尽力しているという。「ふく」は、そういうトラックを見送る役目も負っている、などという。
実際に猫が何をしている、ということはないかもしれない。だが、この猫と共に働きたい、と求めてきた社員もいる。あの猫の会社ですね、と取引をする会社もある。大した広報部長である。その「ふく」の勤務状況や、社員との触れあいなどが、たっぷりと綴られた1冊である。
ただ、ひとつだけ苦情を申し上げる。インスタ掲載のものを含めて、写真がたんまりとあるのは楽しい。ちょっとドスの利いた睨みのある「ふく」の写真は、「愛らしい」とは違うかもしれないが、とにかく猫の写真だ、大いに支持する。写真のカラー頁の製本事情は、文章の頁との兼ね合いで、どこそこに置く、という制約があることも理解する。だが、文章を読んでゆく途中で、何頁もその写真が挟まってくるのが、ちょっと辛いのだ。
文章を追ってきて、さあそれから、と頁をめくると、写真がずらっと並んでいる。インスタの画像の場合には、解説の文も横に付けられている。それで写真を見てそれを読んで喜んでいたら、しばらくすると、先ほどの文章の続きの頁が現れるのだ。必ずしも項目が分かれているのではなく、文の途中の言葉が急に現れて、「瞥をくれると「あ、この前、黒い……」というように続きが始まるのである。えっと、何の話だったっけ。また少し前に戻って、思い出さなければならない。ああ、そうだった。そうして文章をまた読み始めるのだ。
この繰り返しで、なかなか文章が頭に入ってこない。
でも、猫の様子が心に残れば、それでもよいか。せっかくの文章が、もうひとつ頭に入ってこない点を、ライターはどうお感じになるだろうか。苦情というより、心配であるのかもしれない。

た
か
ぱ
ん
ワ
イ
ド