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『3.11が教えてくれた 防災の本 1地震』
片田敏孝
かもがわ出版/
\2625
2011.12.
子どもに安全を訴えるシリーズ。図書館で手に触れることが多くなるであろうと思われるが、それだけでも十分意味がある。ぜひ小学生の皆さんには目を通していただきたい。いや、私のいつもの言い方であるが、大人の人こそ見ていただきたい。一目で理解できるはずである。そして、一番大切なことが何なのか、はっきりしているからである。
もちろん、2011年3月11日の東日本大震災をベースにしている。しかも、しばしば報道されるその悲惨な状況ばかり表に出すのではなくて、避難したことで助かった例をスタートに置いているのがいい。亡くなった方よりは、助かった方のほうが確かに多いのである。
重要なことは、原則である。細かなことは、その後についてくる。避難の三原則をまず掲げる。「想定にとらわれるな! 最善をつくせ! 率先避難者になれ!」というものだ。子どもにはやや難しい言葉である。これらはより具体的には、「ハザードマップを信じるな・あきらめないこと・つなみてんでんこ」とも説明されています。
地震の仕組みを学ぶことも大切だが、さしあたり「そのとき」どうすればよいのか、咄嗟にすべきことを心得ているかどうかが、私たちにとっては最重要であるといえる。しかも、それはどこにいる時にそうなるか知れない。学校にいたら。帰り道だったら。乗物の中だったら。地下街にいたら。買い物をしていたら。そんな場合にひとつひとつていねいに答えていく。知ることは安心につながる。とくに子どもにとり、ひとりでいるときにどうすればよいか、それは自分で判断をしなければならないわけだから、誰も頼りにすることはできない。マンションの廊下は比較的安全であることなど、なるほどと大人でも思う。
その他様々なケースに備えて、シミュレーションが試みられる。連絡についてもどのような可能性があるか教えてもらえる。情報はどのような意味があるのか、どのように受け止めればよいのか、そんな知識ももちろん書かれている。そして、備えあれば憂いなしということで、どんなものが役に立つのかについての説明もある。子どもがそうしたものを活用するのは難しいかもしれないが、何が必要なのかを見ておくだけでもずいぶん違う。
そして、実のところ子どもほど記憶力が定かであるであろうことが、こうした本の本当の意味であるのかもしれない。子どもが一度こうした本を熟読しておくと、心に驚くほどきれいに残っている。大人だと見過ごしてしまうような情報も、明確に記憶している。だからなおそら、一応のマニュアルを伝えておく価値があるというものだ。
裏を返せば、大人もまた、そのような読み方をしなければならないということだ。こうした災害への対処法などの理解は、予測できない災害について、無意味では決してない。ただ、うろ覚えではならない。原則を弁え、原則に従って派生する行動基準を、一連の発想で心の中に位置づけておくことが肝要なのである。
このシリーズは、2津波 3二次災害 4避難生活 と続く。私は今まだ見ていないが、それぞれに役立つことだろう。「生きる力」という言葉が教育界で一時流行ったが、まさにこれこそ正面切って「生きる力」であるにほかならないのではないだろうか。