本

『昭和30年代の福岡』

ホンとの本

『昭和30年代の福岡』
アーカイブス出版
\4935
2007.6

 地元福岡では、かなり話題になっている写真集である。
 6人のベテランカメラマンの手による、福岡の確かな足跡、または記録。それが、かなりまとまった量で、しかも大きめの版で紹介することによって、提供されるに至った。
 私も知らない風景ではあるが、場所としては、知っているところが多い。昔はこのようだったのだ、と、部分的に何かの資料で見覚えはあるのだが、こうたくさん並べられると、まさに時代を写し止めたその技術に、感謝する思いが膨れてくる。
 全体に、報道写真的に、的確に周囲を写しこんだものが多いが、その画面より広くても狭くても語り得ないものが描かれているという、芸術的なポイントに絞り込まれた写真ばかりであるように感じた。
 スナップもあるが、あまりに風俗本位というわけでもない。その人の口から言葉が、あるいはその心から思いが零れてきそうな画像である。
 たんに懐古主義から眺めるもよし。あの時代には戻りたくないと思いつつ眺めるもよし。
 ただ、これらの写真の中に「ひと」を感じたのは、私だけではないだろう。不便なことの多い時代ではあったが、何か、今なくなったものを、この中に見つけることはできるのではないか、という気が、しないでもない。




Takapan
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