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『はじめて出会う古典作品集3 落語・狂言・能・歌舞伎・人形浄瑠璃』

ホンとの本

『はじめて出会う古典作品集3 落語・狂言・能・歌舞伎・人形浄瑠璃』
河添房江・高木まさき監修
光村教育図書
\3675
2010.2.

 国語の教科書でおなじみの光村から国語の教材として相応しい見事な本が図書館に収められていた。大きな本であり、高価である。まさに図書館用だということは誰が見ても分かる。そして、それでいいと思った。
 実にいい。
 まず、江戸文化を伝える写真や資料が載せられている。本を開けばもうそこは江戸時代という構成である。
 大きな文字で、十分な行間をとって、振り仮名があり、古い言葉についての注釈もあるし、狂言のように古い言葉のものには、殆どすべてのせりふに訳が付せられている。小学生が読んでも十分分かる。というより、もちろん小学生に読ませるための資料なのであるから、当然なのであるが、これが大人が読んでも分かりやすくて心地良い。古典に馴染みのない現代人であればなおさら、すべての大人に対してもこの本は適切な文化伝達を実現するものとなるはずである。いつもながら、子ども向けの本は大人こそ開くべきであると私は思う。
 落語なら「ぞろぞろ」「目黒のさんま」「てんしき」が、一つの代表的な台本によって再現されている。そして落語についての解説があり、落語をどう楽しめばよいかのアドバイスがある。すべてが教育的なのである。そしてこれは、まさに大人こそ見てよく分かるものであるのかもしれない。このような調子で、狂言・能・歌舞伎・人形浄瑠璃が掲載されている。花道や見得、隈取などの解説は、まさに鑑賞するための必須事項である。そのような解説もぬかりない。
 なにより原典をじっくり味わうのがいい。国語教材、それは子どものためだけのものにしていてはならない。




Takapan
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