本

『16歳の教科書』

ホンとの本

『16歳の教科書』
講談社
\819
2007.6

 ドラゴン桜公式副読本とあり、人気テレビドラマに関心をもった若者に対して、受験勉強の意義を伝えようと企画されたものであるらしい。そのドラマ自体を私は知らないのだが、多くのファンを生み、勉強することへの目を開かせてくれたものであると聞いている。
 この本は、「なぜ学び、なにを学ぶのか」というサブタイトルと共に、7人のいわば教師に、その科目を学ぶ意味を語ってもらうという形式になっている。7というのは、国数社理英の5科に加え、数学に計算と図形という分け方で二人を費やしているのと、課外授業としてセラピストに語ってもらっているからだ。
 まるで、私のブログ「受験ワンポイントリリーフ」を見ているようだった。
 いや、私のが本になる価値があるなどという意味ではなく、受験生にエールを送る気持ちと、そのための具体的な指導がちゃんとなされているのが、スピリットとして通じたということである。
 もちろん、ここに挙げられているのは、一部の教師の声に過ぎないかとは思う。教育については、百人いれば百通りの理想があり、実践がある。どれが最高でありそれに限る、というふうな方法はないのだ。それは、機械ではない、人間を育てる連関の営みであり、教える側もまた成長していくという構造が避けられないゆえでもある。
 さらにそれは、普遍的な実験ができない。ただ一度だけの出来事としてしか、教育はなしえないものなのである。
 いや、そんな堅苦しい理論はいらない。私としては、16歳に限定するなんて、もったいない。中学生の意識にも含まれていてほしい事柄ばかりであるし、大人だって、何か新しい立場に立たされたような人は、たいへん参考になる分かりやすいことばかりである。
 16歳という設定は、受験前にじっくり考える大切な分岐点であるという意味がもちろんあるだろうが、限定的な売り込み方が実は読者の関心を呼ぶという、広告の原理を含めたものであるかもしれない。そんなふうに勘ぐるくらいに、これは16歳だけの問題ではないと、拍手を送りたい。
 その道のエキスパートが、自分の受験期のことも含めて、本音を語ってくれている。だからたとえば、教会の牧師や教会学校教師の皆さん、これは呼んでためになる本です。
 各科目の教師に、ほぼ共通の質問をぶつけた結果が、各章末に掲げられている。それを見て驚いたのは、社理英の教師が揃って、かつての得意科目が数学だと述べている点である。思考訓練にも等しい数学は、達成度も自覚しやすいし、純粋な理屈を学ぶことができるのであろう。その後どの科目をメインにもっていくにしても、数学は役に立つということではないだろうか。
 実に楽しく、考えるということについて、学ぶことができる。ドラマの人気に関係なく、多くの生徒たちに読んでほしい内容である。このくらいにラフな本でさえ、読む能力がなくなっているとは、思いたくないわけだが……。




Takapan
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